福娘童話集 小学生童話 4年生
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4年生の世界昔話

マッチ売りの少女

マッチ売りの少女
アンデルセン童話 → アンデルセン童話のせつめい
マッチ売りの少女のぬりえ

 むかしむかし、雪の降(ふ)りしきる大みそかの晩(ばん)
 みすぼらしい服をきた、マッチ売りの少女が、寒さにふるえながら、一生けんめい通る人によびかけていました。
「マッチはいかが。マッチはいかがですか。だれか、マッチを買ってください」
 でも、だれも立ち止まってくれません。
「おねがい、一本でもいいんです。だれか、マッチを買ってください」
 きょうはまだ、一本も売れていません。
 場所を変(か)えようと、少女が歩きはじめたときです。
 目の前を、一台の馬車(ばしゃ)が走りぬけました。
 危(あぶ)ない!
 少女はあわててよけようとして、雪の上にころんでしまい、そのはずみにくつを飛(と)ばしてしまいました。
 お母さんのお古のくつで、少女の足には大きすぎましたが、少女の持っている、たった1つのくつなのです。
 少女はあちらこちらさがしましたが、どうしても見つかりません。
 しかたなく、はだしのままで歩きだしました。
 冷(つめ)たい雪の上をいくうちに、少女の足はぶどう色に変(か)わっていきました。
 しばらくいくと、どこからか肉を焼(や)くにおいがしてきました。
「ああ、いいにおい。・・・おなかがすいたなあー」
 でも、少女は帰ろうとしません。
 マッチが一本も売れないまま家に帰っても、お父さんは、けっして家に入れてくれません。
 それどころか、
「この、やくたたずめ!」
と、ひどくぶたれるのです。
 少女は寒さをさけるために、家と家との間にはいってしゃがみこみました。
 それでも、じんじんと凍(こご)えそうです。
「そうだわ、マッチをすって暖(あたた)まろう」
 そういって、一本のマッチを壁(かべ)にすりつけました。
 シュッ。
 マッチの火は、とてもあたたかでした。
 少女はいつのまにか、勢(いきお)いよく燃(も)えるストーブの前にすわっているような気がしました。
「なんてあたたかいんだろう。ああ、いい気持ち」
 少女がストーブに手をのばそうとしたとたん、マッチの火は消えて、ストーブもかき消すようになくなってしまいました。
 少女はまた、マッチをすってみました。
 あたりは、ぱあーっと明るくなり、光が壁(かべ)をてらすと、まるでへやの中にいるような気持ちになりました。
 へやの中のテーブルには、ごちそうが並(なら)んでいます。
 ふしぎなことに、湯気をたてた、がちょうの丸焼(まるや)きが、少女のほうへ近づいてくるのです。
「うわっ、おいしそう」
 そのとき、すうっとマッチの火が消え、ごちそうもへやも、あっというまになくなってしまいました。
 少女はがっかりして、もう一度マッチをすりました。
 すると、どうでしょう。
 光の中に、大きなクリスマスツリーが浮(う)かびあがっていました。
 枝(えだ)にはかぞえきれないくらい、たくさんのろうそくが輝(かがや)いています。
 思わず少女が近づくと、ツリーはふわっとなくなってしまいました。
 また、マッチの火が消えたのです。
 けれども、ろうそくの光は消えずに、ゆっくりと、空高くのぼっていきました。
 そしてそれが、つぎつぎに星になったのです。
 やがてその星の一つが、長い光の尾(お)を引いて落ちてきました。
「あっ、今、だれかが死んだんだわ」
 少女は、死んだおばあさんのことばをおぼえていました。
「星が一つ落ちるとき、一つの魂(たましい)が神さまのところへのぼっていくんだよ」
 少女は、やさしかったおばあさんのことを思い出しました。
「ああ、おばあさんに、あいたいなー」
 少女はまた、マッチをすりました。
 ぱあーっと、あたりが明るくなり、その光の中で、大好(だいす)きなおばあさんがほほえんでいました。
「おばあさん、わたしも連(つ)れてって。火が消えるといなくなるなんていやよ。わたし、どこにもいくところがないの」
 少女はそういいながら、残(のこ)っているマッチを、一本、また一本と、どんどん燃(も)やし続(つづ)けました。
 おばあさんは、そっとやさしく少女を抱(だ)きあげてくれました。
「わあーっ、おばあさんのからだは、とってもあったかい」
 やがて、ふたりは光に包(つつ)まれて、空高くのぼっていきました。

マッチ売りの少女とおばあさん

 新年の朝、少女は、ほほえみながら死んでいました。
 集まった町の人びとは、
「かわいそうに、マッチを燃(も)やして、暖(あたた)まろうとしていたんだね」
と、いいました。
 少女がマッチの火でおばあさんに会い、天国へのぼったことなど、だれも知りませんでした。

おしまい

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