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カニの甲羅の毛

カニの甲羅の毛
鹿児島県の民話鹿児島県情報

♪音声配信
☆横島小次郎☆

 むかしむかし、サルとカニが餅を作る事になりました。

「カニどん、おらが餅をついてやるから、カニどんは餅米を持って来てくれ」
 カニは家から餅米を持って来ると、サルに渡しました。
「よしよし、ではカニどん。おらが餅をついてやるから、カニどんはこの餅米を蒸してくれ」
 カニは言われた通りに、餅米を蒸しました。
「よしよし、ではカニどん。おらが餅をついてやるから、餅をつく為のうすときねを持って来てくれ」
 カニはうすときねを持っていなかったので、山へ行くと自慢のハサミで木を切り倒し、木を削ってうすときねを作りました。
 カニからうすときねを受け取ったサルは、やれやれと言う様に首を横に振って言いました。
「駄目駄目。うすは良いが、こんな曲がったきねじゃ、餅はつけんよ」
 カニは仕方なくまた山へ行って、きねにぴったりの木を探しました。

 さて、その間にサルは曲がったきねとうすで餅をつくと、その餅を持って柿の木に登ってしまいました。
 やがてカニはまっすぐのきねを作って来ましたが、すでにサルは木の上でつきたての餅を食べようとしています。
「やあ、カニどん。
 残念だけど、餅は全部頂くよ。
 欲しかったら、ここまで来てみなよ。
 まあ、カニの足ではここまで登れないだろうけどね。
 ウッキキキー」
 木の上から馬鹿にするサルに腹を立てたカニは、持っていたきねでサルが登った柿の木を思いっきり叩きました。
 ドーーーン!
 するとその振動でサルはバランスを崩して、食べようとしていた餅を落としてしまったのです。
「しまった!」
 サルが慌てて木から降りると、餅はカニが自分の家に持って帰った後でした。
 サルは、カニの家の戸を叩くと言いました。
「悪かった、カニどん。謝るから、おらにも餅を分けてくれよ」
「・・・・・・」
 カニは餅をしっかりと掴んだまま、返事をしません。
「わかった。カニどんが前から欲しがっていた、毛を一本やろう。毛が生えていると、暖かいぞ」
「・・・・・・」
「じゃあ、毛を二本でどうだ?」
「・・・・・・」
「じゃあ、毛を三本だ!」
 なんともせこい交渉ですが、意外にもカニは納得したらしく、サルから毛を三本もらうと餅を半分にして、片方をサルに分けてあげました。

 その時からです。
 サルの毛がむかしより三本少なくなって、代わりにカニの甲羅に毛が生えるようになったのは。

おしまい

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