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カモとりごんべえ

カモとりごんべえ

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スタヂオせんむ

 むかしむかし、あるところに、カモ取りのごんべえさんという人がいました。
 ある朝、ごんべえさんは、近くの池へ行ってみてビックリ。
 仕掛けておいたワナに、数え切れないほどのカモが、かかっていたのです。
 おまけに池には氷が張っているので、カモたちは動けずにいる様子です。
 ごんべえさんは大喜びで、ワナのアミを集めると、池の氷が溶けるまで見張る事にしました。
 そして、うっかり居眠りしてしまい、気がついた時には、もう池の氷は溶けていたのです。
「おっと、大変」
 あわてたときは、もう遅く、目を覚ましたカモたちがバタバタバタと飛び立ち、それと一緒にごんべえさんもカモたちに引っぱられて、空へ舞いあがってしまいました。
 カモたちはごんべえさんをぶらさげたまま、野をこえ、山をこえ、谷をこえ。
「たっ、たすけてくれー!」
 叫んでいるうちに、うっかりアミをはなしてしまいました。
 ごんベえさんは、まっさかさまに空から落っこちると、畑で働いていたお百姓(ひゃくしょう)さんの前へ、ドスン!
「なになに、カモをつかまえようとして、反対にさらわれたって?」
 話を聞いたお百姓さんは、気の毒に思って、
「どうだい、ここでしばらく、くらしていっては」
「はい、よろしくお願いします」
 こうして次の日から、ごんべえさんは畑をたがやしたり、種をまいたり、一生けんめいに働きました。
 そんなある日、アワ畑で刈り入れをしていると、三本だけ、特別に大きな穂をつけたアワがありました。
「ようし、こいつを刈ってやれ」
 手元へ引き寄せて、穂を刈ろうとしたとたん、くきがバネのようにビョーンと、はね返ったから大変です。
「たっ、たすけてくれー!」
 ごんべえさんは、ピューと飛ばされて、遠く離れたかさ屋のお店の前へ、ドスン!
「なになに、アワを刈ろうとして、飛ばされたって?」
 話を聞いたかさ屋の主人も、気の毒に思って、
「それでは、しばらくここで働いて、お金をかせいでいくがいい」
「はい、よろしくお願いします」
 こうして次の日から、ごんべえさんは、お店の手伝いをして、せっせと働きました。
 そんなある日、出来上がったかさを干そうとしていると、風がピューと吹いてきて、ごんベえさんはかさと一緒に、またまた空の上です。
「なんだって、こう、飛ばされてばかりいなけりゃならないんだ」
 ブツブツいいながら飛ばされていくうちに、屋根のような所に足が着きました。
「フー、やれやれ、助かった。だれかさんの家の上に降りたらしいぞ。・・・へぇ!?」
 ところがそこは、なんと、お寺の五重の塔のてっぺんだったのです。
「たっ、助けてくれー!」
 そこへ走ってきたのが、四人のお坊さんです。
 お坊さんは、持ってきたふとんを広げると、
「おーい、大丈夫かー? ここへ飛び降りろー」
「そんなこと言っても、こわいようー」
「大丈夫、大丈夫。しっかり持っているから、はやく飛び降りろー」
 こうなったら、しかたありません。
「よっ、ようし。飛び降りるぞ。それ、一、二の三!」
 ヒューーーン、ドスン!
 ごんべえさんは見事、ふとんのまん中へ飛び降りました。
 しかし、そのひょうしに、ふとんを持っていたお坊さんたちの頭がぶつかり合って、お坊さんたちの目から火花が飛び出しました。
 そしてその火花があたりへ飛んで、五重の塔が焼け、お寺が焼け、何もかもが残らず焼けてしまったということです。

おしまい

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