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福娘童話集 > お話し きかせてね > 日本昔話の朗読
親ネコ子ネコ
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
むかしむかし、きっちょむさんと言う、とてもゆかいな人がいました。
ある日の事、村の伝兵衛さんの飼い猫が、子ネコを四匹生みました。
そのうち三匹は、すぐによその家へもらわれて行きましたが、母親によく似たメスネコだけは、なぜかもらい手がなくて、そのまま家に残りました。
そして一年もたつと子ネコはすっかり大きくなって、今ではどちらが親で、どちらが子どもか、家の人でも簡単にはわかりません。
ある夜の事、村の若者たちが伝兵衛さんの家に集まって酒を飲んでいたのですが、途中で酒が無くなってしまいました。
酒に酔ってせっかくの良い気分なので、だれも町へ酒を買いに行こうとはしません。
すると一人の若者が、よく似た親子のネコを見て、
「おい、ここにきっちょむさんを呼んできて、このネコの親と子を見わけさせようじゃないか。そして間違った答えを言ったら、町へ酒を買いに行ってもらおう」
と、いいました。
それはおもしろいとみんなも賛成し、すぐにきっちょむさんを呼んできました。
そして親子のネコをきっちょむさんの前において、
「きっちょむさん、このネコはどっちが親で、どっちが子か、見分けがつくか? もしうまく言い当てられたら、ここにある料理をみんなやろう。その代わり、もし間違ったら、町まで酒買いに行ってくれ。もちろん、きっちょむさんの金でな。・・・さあ、どうする? もし見分ける自信がないのなら、やめてもいいんだぞ」
と、言うと、きっちょむさんは平気な顔で、
「いいとも。その勝負、受けた」
と、答えました。
そしてきっちょむさんは、料理の中にある魚を、二匹のネコの間に投げ与えたのです。
すると二匹のネコは、
「ニャー」
「ニャー」
と、同時に魚に飛びかかりましたが、そのうちの一匹はすぐに手を引っ込めて、もう一匹のネコが美味しそうに魚を食べるのを、じっと見つめています。
きっちょむさんは、このありさまを見て、
「魚を食べているほうが子どもで、見ているほうが親ネコだ。伝兵衛さん、そうだろう?」
と、答えました。
本当にそうだったので、伝兵衛さんが感心してうなずくと、
「よくわかったな。おれでも、時々間違えるというのに」
と、言いました。
するときっちょむさんは、さっそく料理を一つの皿に移して、持って帰る準備をしながら答えました。
「親と言うのは、自分が腹を空かせていても、子どもにはご飯を与えてくれる、ありがたい存在だ。それは人でも、ネコでも同じ事。・・・さあ、おれも家に預かっている子どもがいるから、早く家に帰って、この料理を食べさせてやらないとな」
そしてきっちょむさんは料理を持って、家に帰っていきました。
おしまい
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