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この下に金なし
吉四六(きっちょむ)さん → 吉四六さんについて
むかしむかし、
吉四六さんと言う、とてもゆかいな人がいました。
吉四六さんの家には大きな畑がありますが、
畑の真ん中には大きな石があって、これが吉四六さんの悩(なや)みの種です。
畑仕事の邪魔なので、どかそうと思うのですが、
これがとても大きすぎて吉四六さんの力ではどうにもなりません。
「全く、邪魔な石だな。これがなければ、畑仕事が楽になるのに。
・・・そうだ」
名案を思いついた吉四六さんは、町に出て行くと出会う人たちにこんな事を言いました。
「実はこの前、馬を売って大金を手に入れたんだ。
だけど、そんな大金を家に置いていたら危ないしな。
どこかに、良い隠し場所はないだろうか?」
それを聞いた人たちは、
「馬鹿だな」
「金をもうけたと言いふらす奴が、どこにおる」
と、あきれ返ったそうです。
そして次の日、吉四六さんは畑の大石のそばに、こんな立て札を立てました。
その立て札には、
《この下に、金なし》
と、書かれてあるのです。
「吉四六さんは、本当に大馬鹿じゃ」
「あれでは、金のありかを教えている様なものじゃ」
村人たちは吉四六さんの変な行動に、あきれ返りました。
でもこれこそが、吉四六さんが思いついた名案なのです。
さて、それから二、三日後。
吉四六さんは、自分の畑に行ってみました。
するとあの大石のそばに、とても大きな深い穴が掘られているではありませんか。
誰かがこの下にお金があると思って、一所懸命に穴を掘ったのでしょう。
「よしよし、思った通りだ」
そこで、吉四六さんが、
「えい!」
と、大石を押すと、大石はゴロンと転がって、うまい具合にその穴の中に入ってしまったのです。
そして上から土をかぶせると、吉四六さんの畑からは邪魔な大石は消えてしまいました。
おしまい
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