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9月25日の日本の昔話

人のよめになったネコ

人のよめになったネコ

 むかしむかし、あるところに、一人のお百姓(ひゃくしょう→詳細)さんがいました。
 毎日、田畑へ出て一生けんめい働きますが、ちっとも暮らしが楽になりません。
 そのため、もう四十を過ぎているのに、嫁さえ、もらうことができないのです。
 ところが、そのとなりに住んでいるのは、村一番の長者(ちょうじゃ→詳細)で、倉(くら→食物を貯蔵する倉庫)には米俵(こめだわら)が山のようにつんでありました。
 いくらぜいたくをしても困らないというのに、ひどいケチで、家で飼(か)っていた一匹のメスネコにさえ、
「近ごろはめしを食いすぎる」
と、言って、家から放り出してしまったのです。
 お百姓さんが寝ていると、夜中に家の外でネコの鳴き声がします。
 気になって戸を開けてみたら、長者の家のネコが、さむそうにふるえているではありませんか。
「どうした? こんなところにいると、こごえ死んでしまうぞ」
 お百姓さんはネコをかかえて家に入れると、汚れたからだをふいてやり、自分のふとんの中へ入れてやりました。
 次の日、長者の家へネコをとどけに行ったら、
「そいつは、もうわたしの家のネコでない」
と、言うので、しかたなく自分で飼うことにしたのです。
 お百姓さんは、なんでもネコと分けあって食べ、まるで自分の子どものようにかわいがりました。
 嫁のいないお百姓さんは、ある晩、ネコをひざにのせながら一人ごとを言います。
「もしおまえが人間だったらなあ。おれが畑へ出ている間に、家で麦の粉をひいてくれたら、どんなにか暮らしが楽になるのに」
 すると、ネコはうれしそうに、「ニャアー」と鳴きました。
「おや、おまえ、わしのことばがわかるのか? ・・・いや、そんなはずはない」
 お百姓さんは、いつものように、ネコをふところにだいて寝ました。
 ところが次の日の夕方、お百姓さんが畑からもどってくると、明かりもないのに、家の中からゴロゴロと石うすをひく音が聞こえてきます。
 ふしぎに思って中をのぞいてみたら、なんと、ネコが石うすで麦をひいているではありませんか。
「おまえ、ほんとうにわしの言うことがわかるのか。いや、ありがとう」
 お百姓さんは喜んで、その粉で団子をつくり、ネコといっしょに食べました。
 それからというもの、お百姓さんのいない時は、いつもネコが石うすをひいてくれるので、お百姓さんはおおいに助かりました。
 ある晩、お百姓さんがいろりにあたっていますと、そばにいたネコが突然口をききました。
「おかげさまで、とてもしあわせな毎日が送れます。でも、このままでは石うすしかひくことができません。この上は人間になって、あなたのために、もっとつくしたいと思います」
 お百姓さんは、マジマジとネコの顔を見て言いました。
「ありがとう。でも、粉をひいてくれるだけでじゅうぶんだ。おまえがいるおかげで、ちっともさみしくない。どうか、わしのところにずっといてくれ」
 するとネコは、涙をながしながら、
「わたしは、なんて幸せものでしょう。長者さんはお金持ちでも、わたしをちっともかわいがってくれませんでした。それなのにあなたは。・・・お願いです。わたしをお伊勢参り(いせまいり)に行かせてください。必ず人間になってもどってきますから」
 それを聞いてお百姓さんは、このネコがますますかわいくなりました。
「よし、わかった。行っておいで」
 お百姓さんはネコのために、なけなしの金を袋(ふくろ)に入れて、首にむすびつけてやると、ネコは喜んで家を出ていきました。
 それからしばらくして、ネコは無事に、お伊勢さんへつくことができました。
 ネコは神さまのいる社(やしろ)の前へ行き、手を合わせていいました。
「神さま、どうかわたしを人間にしてください。わたしをかわいがってくれる人のために、もっともっとつくしてあげたいのです」
 すると、どうでしょう。
 ネコはいつのまにか、美しい人間の娘になっていたのです。
 人間になったネコは、大喜びで、お百姓さんの待つ家へもどっていきました。
 お百姓さんが持たせてくれた金のおかげで、安い宿(やど→詳細)屋にとまることもできました。
 お百姓さんは美しい娘を見て、これがあのネコとはどうしても思えません。
「おまえ、ほんとうに人間になれたのか?」
「はい、神さまのおかげですっかり人間に変わりました。もう二度と、ネコにもどることはありません」
 そこで、お百姓さんは人間になったネコと夫婦になりました。
 きれいでやさしいネコの嫁は、家の仕事から畑仕事まで、人間以上に働きます。
 おかげでお百姓さんは、となりの長者をしのぐ長者となり、いつまでもしあわせに暮らしたということです。

おしまい

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