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ウサギの目が赤いわけ

ウサギの目が赤いわけ
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♪音声配信
☆横島小次郎☆

 むかしむかし、ウサギには、とても立派な角がありました。
 ウサギはこの角が自慢で、外へ出かける時はいつも角を頭の上に乗せていました。
「えへん。どうだい、この角は。きみたちには、こんな立派な角はないだろう」
 ウサギは他の動物に会うと、いつも大いばりです。

 ある日の事、いつもの様にウサギが頭に角を乗せて歩いていると、反対側からシカがやってきました。
 その頃のシカには、まだ角がなかったのです。
 ウサギはさっそく、シカに自慢をしました。
「シカくん、きみはぼくよりも体が大きいが、こんな立派な角はないだろう」
「・・・・・・」
 いくら自慢をされても、角のないシカには言い返す事が出来ません。
(いいなあ。ぼくにも、あんな立派な角があったらなあ)
 シカは、ウサギがうらやましくなりました。
 そこでシカは、ウサギに言いました。
「ほんとうに、立派な角だね。すごいよ。・・・ねえ、ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、貸しておくれよ」
 そう言われると、ウサギはうれしくなりました。
「うーん。大事な角だが、そこまで言うのなら、ちょっとぐらいなら貸してやってもいいかな。はい」
 ウサギが頭の角を外してシカに貸してやると、シカはウサギの角をしげしげとながめました。
(いいなあ、いいなあ、ほしいなあ〜)
 見れば見るほど立派な角なので、シカは角がほしくてほしくてがまんできません。
 そこでシカは、ウサギに言いました。
「ああ、なんて素敵な角だろう。ねえ、お願いだから、ぼくにもちょっとかぶらせてくれないか。ほんのちょっと、ちょっとだけでいいんだ」
 シカがあんまりうらやましそうに言うので、ウサギはますますうれしくなりました。
「うーん。大事な角だが、ちょっとだけなら、かぶらせてやってもいいかな」
 ウサギは角を、シカの頭にかぶらせてやりました。
「どうだい、気分は?」
「うん、いいよ、いいよ! まるで、王さまになった気分だ!」
 シカはうれしそうに首をふって、川のふちへ行きました。
 そして川にうつる自分の姿を見て、シカはうっとりです。
「ウサギさん、どうだい。ぼくにも角が、似合うとは思わないかい?」
「まあまあだね。だけど、ぼくほどは似合わないよ」
「いいや、この角は、ぼくにぴったりなんだ!」
 シカはそう言うと、いきなり川へ飛び込みました。
「あっ、こら!」
 びっくりしたウサギはシカに文句を言いましたが、シカは向こう岸へ上がると、あかんべぇーをしながら言いました。
「やーい、返して欲しければ、ここまでおいで」
「なっ、なんだとー!」
 でもウサギは泳げないので、向こう岸へ渡る事が出来ません。
「こら、返せ! 返さないと、ひどいぞ!」
 ウサギは大声で言いましたが、シカはそのまま山の中へと逃げてしまいました。
「あーん、ぼくの角、ぼくの角が・・・」
 それからというもの、ウサギは泣きながら毎日シカを探して回りました。
 でもどうしても、あのシカを見つける事は出来ませんでした。
「あーん、ぼくの角、ぼくの角・・・」
 ウサギはあんまり泣きすぎたので、目がまっ赤になってしまったという事です。

おしまい

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