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テングのねごと

テングの寝言
三重県の民話三重県情報

♪音声配信
朗読 : エクゼムプラーロ

 むかしむかし、太夫(たゆう)という村に、大きな大きな杉の木がありました。
 その杉の木にはテングが住んでいて、毎晩、村から娘を一人、二人と連れて行くので、この村にはとうとう娘がいなくなってしまいました。
 村人たちは何とかして、テングをこらしめる方法はないものかと考えました。

  ある日の事、一人の村人が言いました。
「テングは鼻が高くて赤ら顔だから、テングよりももっと顔の赤い獅子頭(ししがしら)をつくって、テングをおどかしてやってはどうだ?」
 そこでさっそく村人たちは獅子頭を作り、村の十字路に置きました。

 夜になり、テングは娘を探しに村の十字路にやって来ました。
 村人たちは獅子頭をかぶると、
「それっ!」
と、テングに飛びかかりました。
「なんと! この村に、わしよりも顔が赤くて強い者がいるとは」
 テングはびっくりして、杉の木の中へ姿を消してしまいました。
 そしてテングは杉の木のてっぺんから、村に向かって大きな声で、
「今まで食べた娘を全部はき出すから、許してくれ!」
と、叫び、テングは娘を一人ずつ口からはき出したのです。

  それからというものは、村の杉の大木から、
「許してくれ、許してくれ」
と、いう様な、テングの寝言が聞こえてくるようになったという事です。

おしまい

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