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          福娘童話集 > お話し きかせてね > きょうの日本昔話 
         
        
       
熊野参り 
和歌山県の民話 → 和歌山県情報 
      
      
        むかしむかし、サルがカエルのところへやってきました。 
「カエルどん、カエルどん、一緒に熊野参り(くまのまいり)に行かないか?」 
「いいとも。わしも、一度は行きたいと思っていたところだ」 
 そこで二人は、さっそく熊野参りに出かけました。 
 熊野参りというのは、熊野の権現(ごんげん)さまという神さまにお参りすることで、むかしから大勢の人が出かけたのでした。 
 ところがサルとカエルでは、足の速さが違います。 
 カエルが夢中で歩いても、すぐにサルにおいていかれます。 
 そこである日、カエルが言いました。 
「サルどん、どうだろう。交代でおんぶしながら行っては」 
「なるほど、それなら一緒に行けるというわけだ。よし、お前が先にのれ」 
 サルはカエルをおんぶすると、ピョンピョンと飛ぶように駆け出しました。 
(ああ、らくちん、らくちん。しかし、このまま熊野まで行くいい方法はないものか?) 
 カエルはサルの背中で、あれこれと考えました。 
 そのとき、サルが立ち止まって言いました。 
「ああ、くたびれた。カエルどん交代してくれ」 
 カエルはしかたなく、サルを背中にのせました。 
 でも小さなカエルでは、サルをおんぶして走るのはたいへんな事です。 
 そこでカエルは、 
「サルどん、うんと飛ばすから上を向いてくれ。下を向くと落っこちるからね」 
と、言って、サルは言われたとおり、上を向きました。 
 すると風が吹いてきて、空の雲が飛ぶように流れていきます。 
(ほほう。カエルも、なかなかよう走るわい) 
 サルはすっかり感心して、流れる雲を見ていました。 
 でもカエルは、その場でジッとしたまま、全く動きません。 
 しばらくたって、カエルが言いました。 
「さあ、おりてくれ、交代だ」 
 サルがおりてみると、さっきと同じ場所です。 
「なんだ、ぜんぜん進んでいないぞ」 
「バカな事を言うな。熊野に行くまでには、同じような場所が七ヶ所もあるんだぞ」 
「なるほど。あれほど走ったのに、確かにさっきの場所とそっくりだな」 
 サルはカエルをおんぶすると、またピョンピョンとかけました。 
 このようにして、カエルは交代するたびにサルをだまして、とうとう一歩も歩かずに、熊野参りをすませたという事です。 
      おしまい 
         
         
        
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