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9月10日のイソップ童話
  
  
  
ぬすみをするこどもと母親
   ある子どもが、学校で友だちの本をぬすんできて、母親に見せました。
   すると母親はしかりもせずに、
  「よかったね」
  と、ほめました。
   次の日、子どもはだれかの服をぬすんできて、母親に見せました。
   母親は前よりも、もっとほめました。
   こうして、この子どもは大きくなるにつれて、ますます大きなぬすみをするようになりました。
   けれども、とうとうある日、ぬすみをしているところをみつかって、警察につかまりました。
   そして両手を背中でしばりあげられて、首切り役人のところに引き立てられていきました。
   母親はむねをかきむしって悲しみながら、息子につきそっていきました。
   とちゅうで息子が、
  「お母さん、ちょっと。ないしょの話しがあるから、耳を貸して下さい」
  と、いいました。
   母親が息子の口に耳を近づけたとたん、息子は耳たぶをくわえて、ガブリとかみ切ってしまいました。
  「この親不孝もの! ドロボウばかりして、さんざん心配させた上に、お母さんの耳を食いちぎるとはなにごとですか!」
   母親がしかりつけると、息子がいいました。
  「はじめて本をぬすんだときに、お母さんはぼくをほめてくれた。あのときぼくをしかっていたら、こんな事にならずにすんだのに」
  
   このお話しは、悪いことははじめのうちにこらしめないと、そのうちだんだんひどくなって、手におえなくなる事をおしえています。
おしまい