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11月15日のイソップ童話
  
  
  
ワシとコガネ厶シ
   ワシが、ウサギを追いかけてきました。
   ウサギは追いつめられて、逃げきれなくなりました。
   だれか助けてくれないかと見回しますと、一匹のコガネムシが目にはいりました。
  「お願いです。コガネムシさん、助けて下さい」
  「よしよし」
  と、コガネムシはいいました。
   そして、追ってくるワシに、
  「このウサギは、わたしに助けをもとめてきたのですから、あなたにひきわたすような、かわいそうなことはできません。かえって下さい」
  と、たのみました。
   けれどもワシは、ちっぽけなコガネムシのたのみなど、聞く耳持たぬとばかりに、コガネムシの目の前でウサギを食べてしまいました。
   このことがあってから、コガネムシは、いつかしかえしをしてやろうと、ワシの巣を毎日ねらっていました。
   やがてワシがタマゴをうんだのを見たコガネムシは、ワシの巣のところまで飛んでゆき、巣の中のタマゴをごろんごろんところがして、ぜんぶ落としてわってしまいました。
   ワシは、こまりました。
   こんなぐあいでは、どこでタマゴをうんでも、またやられるにきまっています。
   そこでワシは、ゼウスの神にたよることにしました。
  と、いうのも、ゼウスはワシのまもり神だからです。
  「ゼウスさま、どうぞわたしが安心して子どもをかえすことができるように、おそばにおいて下さい」
  と、ワシはお願いしました。
   ゼウスはワシを自分のひざにのせて、そこでタマゴをうませてくれました。
   しかしコガネムシは、ワシのすることをぜんぶ見とどけていました。
   コガネムシはフンをまるめてボールのようにして、それをかかえると、空へ飛びたちました。
   そしてゼウスのひざのま上まできたとき、そのフンのボールを落としました。
   ゼウスはきたないフンの玉が落ちてきたので、あわてて立ちあがり、はらい落とそうとしたひょうしに、うっかりワシのタマゴを落としてしまいました。
   タマゴは、はるかしたの地面に落ちて、われてしまいました。
   このときから、コガネムシが姿をあらわす季節には、ワシはタマゴをうまなくなったといわれています。
  
   このお話しは、どんなに弱い人もバカにしてはいけないと、おしえています。
 どれほど弱いものでも、ひどい目にあわされたら、いつかはかならず、しかえしをすることができるからです。
おしまい