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3月19日の日本の昔話
水アメの毒
むかしむかし、一休さん(いっきゅうさん)と言う、とんちで評判の小僧さんがいました。
ある日の事。
和尚(おしょう)さんが、村人に水アメをもらいました。
それを欲しそうな目で見ていた一休さんに、和尚さんがこわい顔で言いました。
「一休よ。これはな、大人が食べると薬じゃが、子どもが食べるとたちまち死んでしまうと言う、恐ろしい毒の水アメじゃ。決して、食べてはいかんぞ」
すると一休さんは、ニッコリ笑って、
「はい、絶対に食べません」
と、言いました。
「そうか、そうか」
和尚さんはそれを聞いて、安心して用事に出かけました。
和尚さんがいなくなった事を知った一休さんは、
「えっへへへ。子どもが食べると毒だなんて、よく言うよ。水アメをひとりじめしようだなんて、そうはいかないよ」
と、さっそく他の小僧さんと水アメを分けあって、全て食べてしまったのです。
「ああ、おいしかった」
「でも一休。こんな事をして、和尚さんにしかられないか?」
心配する他の小僧さんに、一休さんはニッコリ笑うと。
「大丈夫、大丈夫。一休に、いい考えがあります。実はですね・・・」
さて、それからしばらくして、和尚さんが用事をすませて帰って来るのが見えました。
すると一休さんは、和尚さんの大切にしていた茶碗(ちゃわん)を持ち出して、それを庭の石に、ガシャン! と、ぶつけて割ってしまいました。
そして目元をつばでぬらすと、みんなで泣きまねをしました。
「えーん、えーん」
帰ってきた和尚さんは、みんなが泣いているのでビックリ。
「こりゃ、なにを泣いておるのじゃ? 一休、これはどうしたことだ?」
すると一休さんが、泣きながら言いました。
「えーん、えーん、和尚さんの・・・、和尚さんの大切な茶碗を割ってしまいました。おわびに毒の水アメをなめて死のうと思いましたが、全部なめても死ねません。えーん、えーん」
それを聞いた和尚さんは、頭をポリポリかきながら、
「こりゃ、してやられたわ」
と、言い、それからは村人にもらったおかしは、みんなで分けることにしたのです。
おしまい