夜泣き・おねしょのおくすり童話 福娘童話集
 


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だんまりくらべ

だんまりくらべ

 むかしむかしあるところに、おじいさんはおばあさんが住んでいました。
 ある日、近所の人がきていいました。
「きのう、もちをついたでな、食べてもらおうとおもって、もってきただよ」
 白くてやわらかそうなおもちに、おじいさんとおばあさんは大よろこびです。
 おもちは七つあります。
 二人は1つずつ、おもちを食べました。
「うまい、うまい」
「ほんとうにおいしいですねえ」
 もう一つずつ、食べました。
「こんなにやわらかくてうまいもちは、食べたことがない」
「ほんとうに。でも、明日までおいておくと、かたくなりますねえ」
 そういうと、また1つずつおもちを食べました。
 これで、残るおもちは1つです。
 さあ、どうしましょうか。
「よし、だんまりくらべをして勝った方が、残りのもちを食べることにしよう」
「いいですねえ」
 だんまりくらべは、先にしゃべった方が負けです。
 なかの良いおじいさんとおばあさんですが、その夜はおしゃべりができません。
 つまらないので、二人とも、早めにねてしまいました。
 さて、その日の夜中、家にどろぼうが入ってきました。
 おじいさんもおばあさんもどろぼうに気づきましたが、だんまりくらべをしているので、口をきくわけにはいきません。
 どろぼうは、ぬすんだ物をせおって逃げようとしました。
 そのとき、お皿の上にあのおもちがおいてあるのを見つけました。
「あっ、うまそうなもちがあるぞ。いただきまーす」
 どろぼうがおもちを食べようとした、そのとき、ついにおばあさんが大声でいいました。
「こらっ、そのもちを食うな!」
 ビックリしたどろぼうは、ぬすんだ物を全部放り出して逃げていきました。
 すると、おじいさんはうれしそうに、
「わーい。ばあさんがしゃべった。わしの勝ちじゃ。もちはわしが食べるぞ。もぐもぐ・・・」
「あーあ、あのときわたしが声をださなけりゃ、そのもちはどろぼうに食べられてしまったのに」
 おばあさんは、うらめしそうにいいました。

おしまい

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