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福娘童話集 > お薬童話 > 肌荒れをやわらげる お薬童話
イヌ飼い七夕
むかしむかし、一人の犬飼いがいました。
お気に入りの犬を連れて池のそばを通ると、犬が急にほえるのです。
「いったいどうした? ・・・あっ!」
ふと見ると、美しい娘が水浴びをしているではありませんか。
「あれは、うわさに聞いた天女(てんにょ)だな。天女なら、きっとどこかに羽衣(はごろも)を脱いでいるぞ」
犬飼いは、犬にいいました。
「そこら中をかぎまわって、羽衣を探し出せ」
しばらくして天女が池からあがってきましたが、羽衣が見つかりません。
犬飼いが、隠したのです。
羽衣がなければ、天へ戻れません。
天女は、困ってしまいました。
「・・・どうしたら、いいのだろう」
そこへ、犬飼いが現れてきて、
「お困りのようだな。よければ、わしの家に来ないか?」
仕方ありません。
天女は犬飼いの家にいきました。
そして、犬飼いの嫁になったのです。
二人は仲よく暮らして、あっというまに数年がたちました。
ところがある日、嫁になった天女が、隠してあった羽衣を見つけてしまったのです。
「あんまり、ひどい!」
天女は羽衣をつけると、空高く舞いあがっていきました。
それに気づいた犬飼いは、
「待っておくれ。いかないでおくれ!」
と、声をはりあげましたが、天女は空の向こうへ消えて二度と戻ってきませんでした。
それから毎日毎日、犬飼いは嫁の天女の事を思い、仕事にも手がつきません。
「どうすれば、嫁を連れ戻せるだろうか」
犬飼いは、うらない師のおばあさんのところへ出かけていきました。
すると、うらない師は、
「連れ戻すことは出来ないよ。だが、お前の方から訪ねていけばいい」
うらない師は天女のところヘいくには、一晩に百足のわらじを作ればいいといいました。
「それを土に埋めて、その上に、へちまの種をまくがいい」
犬飼いはその晩、てつ夜でわらじを作りました。
でも夜が明けたときには、九十九足しか出来上がっていません。
「一足たりないけれど、百足とは、あまり変わるまい」
そしてうらない師の言葉通り、へちまの種をまくとどうでしょう。
へちまのつるはドンドンドンドンのびて、今にも天に届きそうになりました。
「よし、お前もついてこい」
犬飼いは犬とともに、へちまのつるをのぼっていきました。
だけど天女の嫁がいる天が、もう少しだというところで、へちまのつるはのびるのをやめたのです。
「なんということだ。わらじが一足たりないばかりに!」
犬飼いがくやしがっていると、後からついてきた犬が犬飼いの頭を越えて、ピョンと天にとびあがったのです。
そして、
「それ、だんなさま」
と、犬はしっぽをたらしてくれました。
「ありがたい」
犬飼いは犬のしっぽをつかむと、天に飛び上がりました。
そして天に飛び上がった犬飼いは彦星(ひこぼし)に、嫁の天女は織り姫(おりひめ)になったということです。
おしまい
たなばたのおりがみをつくろう おりがみくらぶより
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