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9月29日の日本の昔話
  
  
  
  ネズミのすもう
 むかしむかし、あるところに、まずしいけれど、心のやさしいおじいさんとおばあさんがいました。
   ある日のこと、おじいさんがいつものように山へ行くと、
  「ハッケヨイ! ノコッタ、ノコッタ」
  と、いう声がきこえてきます。
  「はて、なんの声だろう?」
   おじいさんがのぞいてみると、二匹のネズミがすもうをとっていました。
  「あれは、うちのやせネズミと、金もちの家のふとっちょネズミだ」
   おじいさんの家にすんでいるやせネズミは、力がないため、なんどやっても、ふとっちょネズミにまけてしまいます。
   おじいさんは家にかえると、おばあさんにネズミのすもう話をしました。
  「あれじゃあ、かわいそうだ。なんとかして、うちのやせネズミに、かたせてやりたいねえ」
   するとおばあさんが、
  「それじゃあ、うちのやせネズミに、おもちを食べさせてやりましょうよ。きっと、力がつきますよ」
  「そうじゃ、それがええ」
   おじいさんとおばあさんは、さっそくおもちをついて、やせネズミのすんでいる穴に、ころがしてやりました。
   さて次の日、やせネズミとふとっちょネズミは、またすもうをとりました。
   でも、今日はおじいさんの家のやせネズミが、なんどやっても、すもうにかつのです。
   ふしぎに思ったふとっちょネズミが、やせネズミにたずねました。
  「やせネズミくん、どうしてきゅうに、つよくなったんだい?」
   やせネズミは、とくいそうにいいました。
  「えへへへっ、じつはね。きのう、おじいさんとおばあさんがおもちをくれたんだ。だから力がつよくなったんだよ」
  「いいなあ、ぼくの家はお金持ちだけど、ケチだから、おもちをついてくれないんだ」
  「それなら家へおいでよ。おじいさんはきっと、こんやもおもちをついてくれるから、きみにもはんぶん、わけてあげるよ」
  「ほんとうに! うれしいなあ」
   それをきいたおじいさんは、二匹分のおもちをネズミの穴に入れてやり、おばあさんは二匹のネズミに小さなまわしをぬってあげました。
   家にかえった二匹のネズミは、おもちとまわしを見つけて大よろこびです。
   よろこんだふとっちょネズミは、おみやげにもってきた小判を、おじいさんとおばあさんにあげたので、おじいさんとおばあさんはお金もちになりました。
   まずしくても、やさしい心をもって、人にしんせつにしてあげれば、いつか、きっと、しあわせがやってきます。
おしまい