福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 10月の日本昔話 > ネコがネズミをおうわけ
10月25日の日本の昔話
ネコがネズミをおうわけ
むかしむかしの大むかし。
神さまが、人間や動物や草木をつくったばかりのころです。
ある日、神さまが人間の世界を歩いていると、悪魔(あくま)が出てきて、
「おまえは、いろんなものをつくったが、まったく役に立たないものがある。『イバラ』や『アザミ』なんかは、人間を刺(さ)すばかりで、なんの役にも立ちやしない。人間どもはこまって、それをさけているじゃないか」
と、からかいました。
すると神さまが言いました。
「とんでもない。『イバラ』や『アザミ』は、虫たちにとって大切な住みかだ。ちゃんと役に立っている。おまえのような悪魔のからだを刺すためにもな」
「ふん! なにを言うか。こんなもの、痛くもかゆくもないわ」
悪魔は笑いながら、イバラやアザミを足でふみつけました。
「なにをする!」
怒った神さまは、すぐにネズミをつくって、悪魔の口の中へほうりこみました。
「ギャーーッ!」
ネズミが悪魔の舌をかみ切ったのです。
(くそっ! おぼえていろ!)
口をきけなくなった悪魔は、おなかに入ったネズミをかわいがり、どんどん子どもを生ませて、口からはきだしました。
悪魔のおなかから出たネズミは、神さまのつくったものをなんでもかじりました。
(ふん、どんなもんだ)
悪魔は、いよいよ面白がって、ネズミをふやしつづけました。
ネズミがふえて、一番こまったのは人間です。
せっかく神さまに人間の世界をつくってもらっても、このままではネズミにほろぼされてしまいます。
そればかりか、恐ろしいネズミたちは、人間を見ても逃げるどころか、とびかかってくるしまつ。
ひさしぶりに人間の世界へやってきた神さまは、どこもかしこもネズミだらけで、まるでネズミのための世界になっているのでおどろきました。
人間たちが、神さまにいいました。
「神さま、なんとかネズミを退治してください。このままでは、わしらも死んでしまいます」
「よし、わかった」
神さまは、すぐにネコをつくって、
「ネズミどもを、食い殺せ」
ネコは次つぎとネズミをおそい、かたっぱしからネズミをかみ殺します。
人間は喜んでネコをかわいがり、どんどん子どもを生ませました。
おかげでネコがふえるにつれて、ネズミの数がへっていき、やがてネズミは、ネコの姿を見ただけで逃げるようになったのです。
ネコが人間にかわいがられ、ネズミを見ると追いかけてかみ殺すのは、その時からだそうです。
おしまい