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3月9日の小話
走る名人
たいへん足のはやい男がおりました。
あんまり足がはやいので、みんなから、『走る名人』と、呼ばれています。
あるとき、『走る名人』が、どろぼうをおいかけていますと、向こうから友だちがやってきました。
「なんだなんだ、そんなにあわててどうした?」
と、友だちがきくと、この『走る名人』は、
「じつは、どろぼうをおいかけているんだ」
「なに! そのどろぼうは、どこだ、どこだ」
「ほれ、うしろから走ってくる」
おしまい