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1月25日の日本民話
  
  
  
  もちのなる木
  長崎県の民話 → 長崎県情報
 むかしむかし、あるところに、お金持ちの兄さんと貧乏な弟がいました。
   弟は朝から晩までいっしょうけんめい働きましたが、それでも貧乏なのです。
   そこで、兄さんのところへ行って、
  「兄さん、お金を貸してください」
  と、たのみました。
   でも、けちんぼうな兄さんは、
  「お前なんぞに貸す金はない!」
  と、弟を追いかえしてしまいました。
   弟は、くやしくてたまりません。
  (なんとか、兄さんをやっつける手はないものか)
   あれこれ考えているうちに、いいことを思いつきました。
   弟は山へ行って形のいい木を見つけると、根からほりおこして家に持って帰りました。
   そのまま庭に植えると、家に残っている全ての米をむして、もちをつきました。
   お腹が空いていたので、思わず食べそうになりましたが、そこはがまんして、そのもちを山から持ってきた木の枝にくっつけました。
   そして、兄さんに聞こえるように、わざと大きな声で言ったのです。
  「すごいすごい。木にもちがなったぞ!」
   弟のさわぐ声を聞いて、兄さんがやってきました。
   兄さんが見てみると、なんと木にたくさんのもちがなっています。
   兄さんは、もちのなる木がほしくなりました。
   そこで弟にたくさんのお金をわたして、もちのなる木をうばうように持って帰りました。
   さっそく木になっているもちをとってみると、まちがいなく、本物のもちです。
   兄さんはよろこんで、もちを焼いて食べました。
   そのうちに、もちはすっかりなくなりました。
  「まあいい、そのうちもちがなるだろう」
   と、何日も何日も、木にもちが出来るのを待っていたのですが、もちはいっこうに出来ません。
   兄さんはとうとう腹を立てて、弟のところへどなりこんできました。
  「このうそつきめ! あれっきりで後は、ただの一つもならないじゃないか!」
   すると弟は、すました顔で言いました。
  「兄さんは、あの木になっていたもちをみんな食べたのかい? 一番てっぺんになっていた、一番大きなもちも」
  「あたりまえだ」
  「ああ、それじゃだめだ。その一番大きいもちは、親もちだよ。その親もちさえ食わなかったら、どんどん子どもをうんで、たくさんのもちがなったのに」
  「・・・そう、そうだったのか」
 兄さんはガッカリして、とぼとぼと家に帰っていきました。
おしまい