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7月18日の日本民話
  
  
  
  やまんばと名刀
  山形県の民話 → 山形県情報
 むかしむかし、ある村に、隼助(はやすけ)という若者が住んでいました。
   住む家も小さい貧乏な若者でしたが、先祖(せんぞ)から代々伝わる家宝(かほう)の宝は、とても立派な名刀(めいとう)でした。
   隼助の先祖が立派な手がらを立てて、お殿さまからほうびにもらった物だそうです。
   ある日の事、隼助が山に山ブドウやアケビを取りに出かけると、アケビのつるで編(あ)んだ、大きな大きなカゴをひろいました。
  「おお、これはちょうどいい」
   隼助はその大きなカゴに、ブドウやアケビをたくさん入れて山を下りました。
   さて、その夜の事。
   山の方から、
  「ドシン! ドシン!」
  と、いう、地ひびきが家に近づいたかと思うと、家の戸が、
  「ドンドンドン! ドンドンドン!」
  と、たたかれ、そしてカミナリのような大声で、
  「隼助! わしのぞうりを返せ! わしのぞうりを返せ!」
  と、さけばれたのです。
   隼助は、ブルブルとふるえながら、
  「おっ、おら、人のぞうりなぞ知らねえぞ」
  と、いうと、
  「うそをつくな! おらの干しておいたぞうりの片方を、山から持って行ったでねえか。返せ!」
  「何んだか知らねえが、山でひろったものなら家の裏にほしてあるから、持って行け」
  と、いうと、それっきり静かになりました。
   翌朝、隼助が外にでて見ると、大きな足あとが山まで続いています。
   その大きな足あとは、山でひろった大きなカゴと、同じくらいの大きさでした。
  「この大きな足あとは、きっと山姥(やまんば)だ! そしてあの大きなカゴは、やまんばのぞうりだったのか」
   隼助が山姥におそわれなかったのは、山姥が家宝の名刀におそれをなして、家に入る事が出来なかったからといわれています。
おしまい