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8月17日の日本民話
  
  
  
  はじを知れ
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 むかしむかし、あるところに、貧乏なおじいさんとおばあさんがいました。
   明日は正月だというのに、貧乏(びんぼう)なので何の用意も出来ていません。
   しかたがないのでふとんに寝ていたら、夜中にドロボウがしのびこんできました。
   ですが、ひどい貧乏なので、家のどこを探しても、金になるようなものは何一つありません。
   ドロボウがあきらめて帰ろうとすると、おじいさんが言いました。
  「ばあさんや、さっきからドロボウがきているようだが、どうするね?」
   すると、おばあさんが言いました。
  「なあに、かまうもんですか。取る物なんて、なんにもありゃしませんよ。こんな家にしのびこむなんて、よっぽどまぬけなドロボウですね」
  「そうだな、本当にまぬけなドロボウだ。あはははは」
   それを聞いて、ドロボウが腹を立てました。
   二人の寝ている枕もとへいくと、枕をけとばしてどなりました。
  「やいやい! 人をバカにするのもいいかげんにしろ! 取る物もないような家に住んでいる、お前たちの方こそはじを知れ!」
   すると、おばあさんが言いました。
  「それは、すまんことで。でも、その何もない家にしのびこむなんて、お前さんは、わたしらよりも貧乏なんですね」
  「あっ・・・・」
 たしかにそのとおりだと思い、ドロボウは急に恥ずかしくなって、あわてて逃げていったという事です。
おしまい