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1月18日の世界の昔話
かしこいチビの仕立屋さん
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むかしむかし、あるところに、とても高慢(こうまん→おもいあがっている人)なお姫さまがいました。
お嫁さんになってほしいといってくる人がいると、お姫さまはなぞなぞをだしてその人にあてさせます。
もしあてることができないと、その人をバカにして、追い払ってしまうのです。
それから、お姫さまは、
《じぶんのだすなぞなぞをとくものがあったら、わたしはその人のお嫁さんになってあげる、だれでもおいでなさい》
と、いうおふれをだしたのです。
ある日、三人の仕立屋(したてや)さんが、なぞなぞにちょうせんするためにお城へ行きました。
三人がそろってお姫さまのまえヘでると、お姫さまがいいました。
「わたしの頭には、ふたとおりの髪の毛があるんだよ、それはどんな色?」
一番目の仕立屋がいいました。
「それは世間でいう、ゴマ塩頭のことで、白と黒でございましょう」
すると、お姫さまは首を横にふりました。
「ちがいますよ。二番目の人、こたえてごらん」
そこで、二番目がいいました。
「黒白まじりでないとすると、わしのおやじのいっちょうらみたいに、茶色と赤でござろう」
「ちがいますよ。では三番目の人、こたえてごらん」
「お姫さまの頭には、銀の毛が一本と金の毛が一本あります。二色というのはこれでございます」
「・・・・・・!」
お姫さまはこれをきくと、まっさおな顔をして、おどろきのあまりその場にたおれそうになりました。
なぜかというと、三番目のチビの仕立屋は、みごとにあててしまったのです。
お姫さまは、こればかりはこの世のどんな人間にもわかりっこないと信じきっていたのです。
やがて気をとりなおすと、お姫さまはいいました。
「それだけでは、おまえはまだわたしを手にいれたわけではありませんよ。もうひとつしてもらわなくてはならないことがあるのです。下の小屋にクマが一匹いるから、おまえは今夜そのクマといっしょに夜をあかすのです。あしたわたしがおきてみて、おまえがまだ生きていたら、わたしはおまえのお嫁さんになりましょう」
これでチビの仕立屋をやっかいばらいできると、お姫さまは考えました。
なにしろこのクマは、じぶんの手のなかヘ入った人間を、ひとりとして生きてかえらせたことはなかったのです。
さて、夕方になると、チビの仕立屋は下のクマのところへつれていかれました。
クマはいつものように、すぐさまこのチビの仕立屋にとびかかろうとしましたが、
「おっと、いいものをあげるよ」
と、仕立屋はいって、ポケットからクルミをだすと、クルミのからを歯でかみわって、なかの実を食ベました。
「ああ、うまい。それ、おまえの分だ」
チビの仕立屋は、ポケットヘ手をつっこんでクマにひとつかみやりましたが、それはクルミではなくて、石ころでした。
クマはそれを口ヘほおばりましたが、いくらかんでもわれません。
(えい、どうしてわれないんだ? あんなチビでもわれるのに)
がんばってみましたが、どうしてもわれません。
クマはチビの仕立屋にいいました。
「ごしょうだ、このクルミをわってくれ」
「なんだ、そんなでかい口をしてるくせに、こんなちっぽけなクルミひとつわれねえのかい?」
チビの仕立屋はこういって、クマの口ヘ入れた石をだすと、すばやく本物のクルミとすりかえて、自分の口のなかヘほうりこみました。
カリッ!
たちまちクルミはまっぷたつです。
それをみて、クマはいいました。
「おかしいな。よし、おらも、もういっぺんためしてみよう」
「ああ、いいよ」
チビの仕立屋は、またしてもクマの口に石ころを入れました。
カリカリ、カリカリ。
クマがなんどもなんども石ころをかんでいるあいだに、チビの仕立屋は上着の下からヴァイオリンをとりだして、一曲ひきました。
クマは音楽をきくと、じっとしていられなくて、おどりだしました。
こうしてしばらくおどっていましたが、これが気にいったので、チビの仕立屋にききました。
「なあ、バィオリンをひくのはむずかしいかい?」
「かんたんさ。だが、ちょいとおまえの手をだして見せな。ほほう、おそろしく長いつめだな、ちいっとつめを切らずばなるまい。まずは、うごかないように固定(こてい)してと」
チビの仕立屋は、クマの前足を万力(まんりき)で動けないように固定すると、
「さあ、わしがハサミをもってくるまで待ってろよ」
と、いって、動けなくなったクマの後ろで、グーグーとねむってしまいました。
次の朝、お姫さまが小屋をのぞいてみると、チビの仕立屋が元気にあいさつしました。
「やあ、お姫さま。おはようございます」
それを聞いて、お姫さまはビックリです。
「・・・どうして!」
ぼうぜんと立ちつくすお姫さまに、チビの仕立屋がいいました。
「では、そろそろ結婚式の準備(じゅんび)をはじめましょうね」
「・・・はい」
こうなっては、しかたありません。
なにしろ、おおっぴらに約束したことですから。
こうしてチビの仕立屋はお姫さまと結婚して、たのしい毎日をおくりました。
おしまい