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1月20日の世界の昔話
頭のいいコヨーテ
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むかしむかしのある日、ヘビが岩にはさまれて、動けなくなりました。
そこへ、アヒルがやってきました。
「アヒルさん、おねがいです。この岩をおしてください」
と、ヘビがたのみました。
「ええ、おやすいご用ですとも」
アヒルはじょうぶな胸で、岩を動かしました。
すきまができると、ヘビは岩からぬけだして、アヒルの前にたちふさがりました。
「ながいことはさまれていたので、腹ぺこになっちまった。おまえさんをちょうだいするぜ」
こういってヘビは、まっ赤な長い舌をだして、ペロペロと舌なめずりをはじめました。
アヒルは足がすくんで、動けなくなりました。
それでもやっと、勇気をだしていいました。
「いくらなんでも、そんなひどいことをしちゃいけません」
「どうして、ひどいことなんだ?」
と、ヘビが聞きました。
「だってわたしは、あなたをたすけてあげたんですよ。お礼をくれるのがふつうじゃありませんか」
「おや? おまえさんは知らないのかい。いいことをすると、わるいむくいがあるっていうじゃないか」
「そんなの、はじめて聞きましたよ。それじゃ、わたしのいうこととあなたのいうことと、どっちが正しいか、だれかにきめてもらいましょう」
と、アヒルがいいました。
「ああ、いいとも。だれだって、おれのいうほうがほんとうだっていうよ」
そこでアヒルとヘビは、いっしょに歩いていきました。
やがて、ロバにであいました。
「ちょうどいい。さあ、聞いてみるんだな。いいことをすると、わるいむくいがあるかどうか」
ヘビにこういわれて、アヒルはロバにたずねました。
するとロバは、
「うん、そのとおりだよ。いいことをするとわるいむくいがあるとも。わたしは人間のところで、おなかがすいていてもよく働いた。暑い夏も寒い冬も、もんくをいわずにきちんとしごとをした。ところがどうだ。いまはこのとおり、すっかりよわってしまい、背中がいたくてしょうがないんだ。すると主人はわたしを、うえ死にさせようというんだからなあ。いいことをしても、お礼はいわれないよ」
と、いいました。
アヒルは、ビックリしましたが、
「ひとりのいうことだけでは、あてになりませんからね。もうひとりに聞いてみましょう」
と、いいました。
「ああ、いいとも、だれにでも聞くがいいさ」
しばらくいくと、こんどはウシにあいました。
「ウシさんに聞いてごらん。いいことをすると、わるいむくいがあるかどうか」
アヒルがたずねると、ウシはいいました。
「わたしを見てごらん。なん年もなん年も、主人のために働いた。どんなにくたびれてもがまんして、いっしょうけんめい働いてきた。ところがわたしは、年をとって力がなくなってしまった。そうするとどうだ。主人はこんどは、わたしに草をたべさせてばかりいるんだ。自由にしてくれたのかと思えば大ちがい。ふとらせて肉屋ヘ売ろうというんだからねえ。よいことをするとわるいむくいがある。これはほんとうだよ」
またまた、ヘビの味方です。
「いいえ。ロバもウシも、人間につかわれていたから同じようなことをいうんですよ。こんどは、人間に飼われていないなかまに聞いてみましょう。そうだ、あっちからコヨーテがやってくる。コヨーテに聞いてみましょう」
すると、ヘビは、
「はん。コヨーテが、おまえさんのためになることをいってくれるとでも思っているのかね?」
と、鼻で笑いました。
さて、コヨーテが近づくと、ヘビはアヒルの話をして、どう思うかと聞きました。
コヨーテは、しばらく考えていましたが、やがて、
「まず、アヒルさんがたすけたとき、ヘビさんはどこでどんなかっこうをしていたのかねえ。じっさいに見ないと、なんともいえないな」
と、いいました。
アヒルは少し、ホッとしました。
ヘビは、
「ああ、いいとも」
と、いって、もとの岩のところにもどりました。
「さあ、ヘビさん、横になりたまえ。アヒルさんが岩をどけるとき、ヘビさんはどんなかっこうをしていたんですか?」
と、コヨーテがいいました。
ヘビがからだをのばすと、コヨーテは大いそぎで岩をころがして、ヘビの頭をおさえつけてしまいました。
「こう、なってたのかい?」
「うん、そうそう。このように、岩で動けなかったんだ」
と、ヘビがこたえました。
すると、コヨーテがいいました。
「じゃ、ここにこうしておいで。よいことをするとわるいむくいがあるっていってたね。じゃ、わるいことをしたらどうなるかね。これで、わかったろう」
おしまい