むかしむかし、あるところに、とても花の好きなおじいさんがいました。 おじいさんは毎朝早くに庭をきれいにそうじして、木にも草にも一本のこらずていねいに水をやります。 新しく咲いた花を見つけると、おじいさんはよろこんでその花におじぎをしたり、お酒をそなえたりしました。 雨がひどく降ったり、風がはげしく吹くときなどは、おじいさんは夜中でも起き出して庭を見守ります。 もし折れそうな枝があると、竹で作ったささえをしてやります。 そして散った花びらをはき集めて、一つ一つ水できれいに洗います。 ある日の事、そのおじいさんの家のそばを、らんぼうな男たちが通りかかりました。 らんぼう者たちは、おじいさんの家のとびらをドンドンとたたきました。 でもらんぼう者は花も見ないで、仲間たちと一緒に酒を飲みはじめました。 そのうちに酔っぱらったらんぼう者は、そばにあったボタンの花の枝をおろうとしました。 「ええい、うるさい! こうしてくれるわ!」 おじいさんが振り向くと、美しい花の仙女(せんにょ)が立っていました。 「おじいさん、そんなに悲しまなくてもいいですよ。花はみんな、元に戻してあげます」 そしておじいさんが花を見てみると、いつの間にか花はみんな元通りになっており、どの花も前よりもっときれいな色になって咲いていました。 あのらんぼう者たちは、あれからすぐに手や足の動かない病気になったという事です。 おしまい
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