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2016年 6月20日の新作昔話

たぬきの紙袋

たぬきの紙袋
和歌山県の民話和歌山県の情報

 むかしむかし、ある山にイタズラだぬきの一族が住んでいました。
 イタズラだぬきたちは毎日のように山からおりてきて田畑を荒らし、人をだましては喜んでいました。
「このままじゃ、おちおち畑仕事にも行けない」
「何か良い方法はないものか」
 村の大人たちが相談をしていると、一人の男の子が言いました。
「おらが、イタズラだぬきを退治してやるぞ」
「大人でもだまされるイタズラだぬきに、子どものお前が退治できるものか」
「大丈夫。おらに任せてくれ」
 男の子は大人たちが引き止めるのも聞かずに、一人で山へ行きました。

 山を登ると、山道の上から美しい娘がしゃなりしゃなりと歩いて来ました。
(こんな所に娘さんがいるわけがない。あれがイタズラだぬきだな)
 男の子は娘のそばへ行くと言いました。
「たぬきよ。なかなか上手に化けているじゃないか」
「ひぇっ!」
 たぬきと見破られた娘は、びっくりしながら男の子にたずねました。
「どうして、たぬきとわかったんだ?」
「だって、着物のすそから尻尾が見えてるぞ」
 本当は尻尾など見えていませんが、たぬきはお尻を押さえながら言いました。
「尻尾はきれいに隠したつもりだったが。それでお前は何者だ?」
「わしは化けるのが得意なきつねだ。どうだ、どこから見ても人間そっくりじゃろ」
 たぬきは感心した様に、男の子を眺めました。
「見事な化けっぷりだ。どうみても人間にしか見えん」
「そうだろう。でも実は、人間にうまく化けるにはある道具が必要なんだ。よかったら教えてやろうか?」
「それはありがたい。ぜひとも教えてくれ」
「いいとも。ついでだから、お前の仲間たちにも教えてやろう。仲間は全部で何匹だ?」
「おれを合わせて十五匹だ」
「よし、準備があるから、明日の晩に仲間を連れてここに来てくれ」
「わかった。明日仲間を連れてくる」
 娘に化けたたぬきは、大喜びで山の中へ帰っていきました。

 男の子は家に戻ると、丈夫な紙で大きな袋を十五枚作りました。

 次の晩、男の子が紙袋を持って山へ行くと、人間に化けた十五人のたぬきが男の子を待っていました。
 昨日の娘に化けたたぬきが、男の子を仲間たちに紹介します。
「よく来てくれた。みんな、これが化け上手なきつねだ。どこから見ても人間の子どもに見えるだろう」
「たしかに」
 ほかのたぬきたちも、感心したように頷きました。
 男の子が持ってきた紙袋を、人間に化けたたぬきたちに渡して言いました。
「これはきつねに伝わる宝で、化けるのが上手になる袋だ。
 この袋に入って一晩過ごすと、不思議なことに化け上手になる。
 人間の姿だと入りにくいから、みんなたぬきの姿に戻って袋に入ってくれ」
「わかった」
 人間に化けたたぬきたちはたぬきの姿に戻ると、言われたとおり紙袋の中に入っていきました。
「よし、今から紙袋に封をするが、明日の朝までがまんしてくれ。明日になれば、みんな化け上手になっているぞ」
 男の子はたぬきの入った紙袋に次々と封をして、たぬきが紙袋から逃げられないようにしました。

 こうして男の子は、イタズラだぬきの一族を見事捕まえたのです。

おしまい

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