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              ささらと昔話講座 第08話【ものぐさ太郎】 
        
         
         
ものぐさ太郎 
 
ささらとゆっくり昔話 第08話【ものぐさ太郎】 
       
      読者の「NS.MOOOON」さんの投稿作品。 
           
        知っているようで知らない日本昔話を、あれやこれやとささらちゃんが学んでいく動画です。 
      京都府の民話 → 京都府情報 
         
        長野県の民話 → 長野県情報 
       むかしむかし、ものぐさ太郎という、大変ななまけ者がいました。 
 あるとき、情け深い人が太郎にもちを五つやりました。 
 四つまで食べてしまって、残りの一つがコロリと道ばたに転がったのです。 
 それを見た太郎は、 
「取りに行くのが面倒だ、人が来るまで待っていよう」 
と、とうとう三日の間待ちつづけたのです。 
 そして四日目の朝のこと、このあたりを治める地頭(じとう)の行列が通りかかりました。 
「のう、すまんがそこのもちを取って下され」 
 太郎はさっそく声をかけましたが、地頭は知らん顔です。 
 これには太郎も腹が立ったとみえて、今度は大声で言いました。 
「もちも拾ってくれんようななまけ者が、よく地頭なんぞやっておられる。世の中でなまけ者は俺一人かと思っておったが、とんだまちげえだ」 
 これを聞いた地頭、はたと馬を止めて、 
「ほう、お前がものぐさ太郎か。お前、一体どうやって暮らしておる」 
と、話しかけました。 
「ふん、人さまが飯をくれるまでは、何日でも待っているさ」 
 太郎のこの態度に地頭は大笑いして、さっそくこんなおふれを出しました。 
《ものぐさ太郎に毎日飯と酒を与えよ。もしこれを守らぬ者は領内にとどめてはおかぬ》 
 これには村の人も驚きましたが、このいいつけを守って、やがて三年の月日が過ぎたある年の春、この里に都から、ながふが割り当てられました。 
 ながふというのは、都にある国司の屋敷へ仕えに来いという命令です。 
 けれども誰一人、行きたがる者はいません。 
 それで、やっかい者の太郎を行かせることにしました。 
 みんなは、 
「都には、きれいな女がいるぞ」 
「うめえもんが、たくさん食えるぞ」 
と、口からでまかせを言って、どうにか太郎を説得したのです。 
 こうして太郎は都にやって来ましたが、どういうわけか、太郎は今までのものぐさとは違って、とてもまじめに働いたのです。 
 ある日の事、太郎は用事で清水寺(きよみずでら)に出かけました。 
 そこへ、十七、八才のきれいな娘が現れて、それを見た太郎はその娘にひと目ぼれしました。 
 でも娘は汚い太郎を怖がって、逃げようとしたのですが、太郎は娘をはなしません。 
 そこで娘は、 
♪から竹を、杖につきたるものなれば 
♪ふしそひがたき、人をみるかな 
と、いう歌をよんだのです。 
 すると太郎も、一体どこで習ったのか、すかさず 
♪よろづ世の竹の、よごとにそふふしのなどから竹に、 
♪ふしなかるべき 
と、よみ返したので、娘もびっくりです。 
 これはただの男ではないと、さっそく太郎を屋敷へつれ帰って、七日の間風呂に入れてみがきあげました。 
 すると太郎は、とてもりりしい男になったのです。 
 こうしてものぐさ太郎は、思わぬことからその娘を妻にめとったのです。 
 そして故郷の信濃(しなの)にもどると大きな館を建てて、世話になった村人たちにも、それは親切にして、一生しあわせに暮らしたということです。 
      おしまい 
           
             
           
          
          
       
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