| 福娘童話集 > きょうの世界昔話 > その他の世界昔話 >ハートの女王
 第264話
 不思議の国のアリス 第14/20話 ハートの女王
 
 
  イラスト:ジョン・テニエル
 
 ハートの女王
  四人が地面にはいつくばっていると、やがて大勢の足音が聞こえました。アリスははいつくばったまま、女王を見ようとこっそり顔を上げました。
 始めに三人と一緒のトランプ姿が、十人現れました。
 書かれているマークはクラブで、数字は4から13のキングです。
 次に、ダイヤの十三人が現れました。
 次は、スペードの十三人。
 そして最後に現れたのはハートですが、ハートは他のトランプとはちがって、とてもいばって歩いています。
 ハートの1から10まで現れると、次にハートのジャックが現れました。
 ハートのジャックはまっ赤なビロードのクッションの上に、王さまのかんむりをのせて運んでいます。
 この大行列の最後に来たのが、ハートの王さまと女王でした。
 普通は王さまの方がえらいのに、ハートの女王は王さまよりもいばっています。
 「はいつくばっていたら、よく顔が見えないわ」
 アリスは女王の顔を見ようと、つい立ち上がってしまいました。
 すると女王がそれを見つけて、ハートのジャックに言いました。
 「あれは、何者じゃ?」
 ハートのジャックはアリスを見ると、返事の代りに首をかしげてニコニコ笑いました。
 「ばかもの!」
 女王は歯がゆそうに言うと、今度はアリスに向かって聞きました。
 「お前の名は、なんと申すのか?」
 アリスは、出来るだけていねいに答えました。
 「おそれながら、わたくしの名はアリスと申します」
 でも心の中で、こう思いました。
 (なあんだ。この人たち、たかがトランプじゃないの。何も怖がる事なんかないわ)
 女王は次に、バラの木のそばではいつくばっている三人を指さして聞きました。
 「ではアリス。この者たちは、ここで何をしているのじゃ?」
 「えっ? ・・・それは」
 三人が白いバラを赤くぬっていた事を正直に言えば、三人は女王さまに殺されてしまいます。
 でもとっさにうまい言い訳を思いつかなくて、アリスは女王に言いました。
 「そんな事、あたしの知ったことじゃないわ」
 すると女王は、まっ赤な顔でアリスをにらみ付けると、かなきり声をあげました。
 「女王に、何て口のききかたを! これの首を、切ってしまえ!」
 「首を! どうしてあたしが首を切られるのよ!」
 アリスは女王に負けない大きな声で、言い返しました。
 「ひぇっ!」
 怒鳴ることはあっても怒鳴られたことがなかった女王は、アリスの声にびっくりしてだまり込みました。
 すると王さまが女王のうでに手をかけて、恐る恐る言いました。
 「考えてやりなさい。相手はまだ、ほんの子どもじゃないか」
 女王はプンプン怒って、はいつくばっている三人に怒鳴りました。
 「そこの者ども、立て!」
 三人はびっくりして立ち上がると、女王や王さまにペコペコと何度もおじぎをしました。
 「そんな事はいい。見ていると、目がまわってくる」
 女王はそう言って、今度はバラの木を見ながら言いました。
 「お前たちは、ここで何をしておったのじゃ?」
 「はい。おそれながら、申しあげます」
 クラブの3が、うやうやしく片ひざをついて答えました。
 「実は、わたくしどもは・・・」
 「わかった」
 バラの木を調べていた女王が、叫びました。
 「よくも白いバラを植えたね! この者どもの、首をはねろ!」
 そして女王は列に戻ると、行列はまた動き出しました。
 そして三人のトランプ兵士が、運の悪い三人を死刑にするために残りました。
 死刑にされる三人は、アリスのところにかけよって助けをもとめました。
 「大丈夫よ。首を切らせるもんですか」
 アリスは兵士たちが首を切る準備をしている間に、三人をそばにあった大きな植木ばちの中にかくしました。
 準備が終わった三人の兵士は、死刑にする三人を探してうろうろしましたが、やがてあきらめて行列のあとを追っていきました。
 おわり
 続きは第15話、「クロッケー遊び」
 
 ※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
 
  
 
  イラスト 「愛ちん(夢宮愛)」  運営サイト 「夢見る小さな部屋」
   
 
 |