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 第265話
 不思議の国のアリス 第15/20話 クロッケー遊び
 
 
  イラスト:ジョン・テニエル
 
 クロッケー遊び
  兵士たちが帰ってくると、女王は兵士に聞きました。「あの者どもの、首は切ったかい?」
 首を切っていないと言うと今度は自分たちの首が切られるので、三人の兵士は女王にうそを言いました。
 「はい。もうあいつらには、首はございません」
 「よろしい。ところでお前、クロッケー遊びが出来るか?」
 クロッケー遊びとは、フランスで始まりイギリスで発展した木づちでボールを打つ遊びです。
 兵士たちはだまって、アリスの顔を見ました。
 女王は、アリスに聞いたからです。
 「はい。やったことはありませんが、ルールは知っています」
 「それなら、ついておいで」
 言われたアリスは、女王の行列にくわわって歩きました。
 広場につくと、女王がカミナリみたいな声で怒鳴りました。
 「みんな、位置につけ!」
 するとトランプたちがかけ出して、ぶつかりあいながら四方八方にちっていきました。
 そしてみんな位置につくと、ゲームがはじまりました。
 「こんなおかしなクロッケー、始めて見たわ」
 アリスは女王に聞こえないように、小さな声で言いました。
 何しろ広場は平らではなくでこぼこで、ボールは生きたハリネズミ、そしてボールを打つ木づちは生きたベニヅルだったのです。
 女王が最初に、ボールのハリネズミを打ちました。
 女王はクロッケーが下手で、ハリネズミのボールはとんでもない方向へ転がっていきましたが、ゲートの代りをしているトランプたちが急いで動いて、ハリネズミのボールを自分たちの体で作ったゲートに通しました。
 「ほれ見なさい。わたしの腕前を」
 ゲートがボールに合わせて動くなんて完全にインチキですが、女王は満足そうです。
 「では次、お前の番だよ」
 「はい。女王さま」
 アリスはベニヅルを小わきに抱えると、ハリネズミのボールを打とうとしました。
 するとベニヅルがくにゃりと体を曲げたので、アリスは空振りです。
 それをみて、女王もトランプたちも大笑い。
 「もう、ベニヅルさん。ちょっとの間、じっとしていてよ」
 アリスはベニヅルの首を真っ直ぐに伸ばすと、その頭でハリネズミを打とうとしました。
 すると今度はハリネズミが丸めた体を伸ばして、とことこと走っていったのです。
 おかげでアリスは、またしても空振りです。
 「ああん、もう。ベニヅルさんもハリネズミさんも、じっとしていてよ」
 アリスはベニヅルとハリネズミに注意をすると、三度目の正直でハリネズミのボールを打つことが出来ました。
 ハリネズミのボールはまっすぐ転がって、トランプたちのゲートをくぐろうとします。
 「やったわ!」
 でもゲートをくぐる寸前にトランプたちが立ち上がって、別の場所に移動してしまいました。
 「あらあら、お前はクロッケー遊びが下手だね。いいかい、わたしが手本を見せるから、よく見ているんだよ」
 女王はそう言って、大きな空振りをしました。
 でもハリネズミは自分から転がっていき、トランプたちのゲートをくぐります。
 これではアリスが、勝てるはずはありません。
 おわり
 続きは第16話、「娘の首をはねておしまい!」
 
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  イラスト 「愛ちん(夢宮愛)」  運営サイト 「夢見る小さな部屋」
   
 
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