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福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第39話

ゆうれいのそでかけ松

ゆうれいのそでかけ松

♪音声配信
スタヂオせんむ

 むかしむかし、漁師が川に船を出して、夜釣りをしていました。
 ところが、どうした事か、今日は一匹も釣れません。
「今夜は、あきらめて帰るとするか」
 漁師がそう思っていると、釣りざおが突然、弓なりになりました。
 めったにない、大物の手応えです。
 喜んで引き上げると、
「・・・へっ? ギャァァァーー!」
 釣り糸の先には、若い娘の亡骸が引っかかっていました。
「わわぁ、なむあみだぶつ、なむあみだぶつ」
 漁師は、亡骸を捨てるわけにもいかず、船に引き上げました。
「ああ、可愛そうに・・・」
 漁師は娘の亡骸を近くのお寺に運んで、和尚(おしょう)さんにとむらってもらいました。
 すると次の晩から、お寺の古い松の木の下に、あの若い娘の幽霊が現れ始めました。
「手厚くほうむってやったのに、まだ、この世にうらみでもあるのだろうか?」
 和尚さんが不思議に思っていると、娘の幽霊が現れて、
「先日は、ありがとうございました。まよわず、あの世へ行きたいのですが、心残りが・・・。一言、お聞き下さいませんか?」
 かすかな声で、言いました。
「なんなりと、話しなさい」
「はい。実は、好きな人の元へ、お嫁(よめ)に行く事になっていたのですが、家が貧しい為、嫁入りの着物が作れないでいました。その為、せっかくの縁談(えんだん)が、壊れてしまったのです」
「それはさぞ、つらかったろう。よしよし、今となっては手遅れながら、わしが嫁入りの着物をそろえてやろう」
 和尚さんが言うと、娘の幽霊は涙を拭いて、フッと消え去りました。

 あくる日、和尚さんは約束の着物を買って来て、古い松の枝にかけておきました。
 すると夜中に娘の幽霊が現れて、着物を着替えて行ったのでしょう。
 嫁入りの着物は消えて、代わりに娘がおぼれて死んだ時の着物のそでが、枝にかけられていました。
 その時から、この松は『幽霊のそでかけ松』と、呼ばれる様になったのです。

おしまい

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