百物語 日本の怖いお話し 福娘童話集 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
- 広 告 -
 


福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語)

百物語 第103話

黒雲

黒雲

 むかしむかし、一そうの船が、荒波(あらなみ)のなかを走っていました。
 ながい航海(こうかい)もおえて、まもなく港につくというころ、晴れわたっていた空のゆくてに、ポツンと一つ、点のような黒雲があらわれました。
 雲は陸地のほうから、しだいしだいに、こっちへやってきます。
 船に近づくにつれて、黒雲は、だんだん大きくふくれあがってきました。
 そして、船のま上まできたときには、日の光はまったくさえぎられ、あたりは不気味(ぶきみ)な暗さにつつまれました。
 とつぜん、
「あーれー」
と、いう、女のひめい。
「はて、この船には、女はのっておらんが」
「してみると、あの声は雲の中からか?」
 船の人たちは、ふしぎなできごとにおどろいて、甲板(かんぱん)に集まりました。
 そして、ひとみをこらして、頭上にうずまく気味のわるい黒雲を見つめます。
 黒雲はグルグルとうずまいて、なにか、あやしい目のようなものが、雲の中でうごきまわっています。
 やがて、黒雲は船をおしつぶすようにひくくおりてきました。
と、そのとき。
「うわーっ」
 船のりたちは、思わずさけびました。
 とぐろをまく黒雲の中から、人間の足がたれさがってきたのです。
「うぬっ!」
 気丈(きじょう→少々のことでは、あわてない事)な船のかしらは、いきなりその足にとびついて、ひきずりおろしました。
 見ると、それは老婆の死体でした。
「たいへんなものが、ふってきたわい」
「死人じゃ。水葬(すいそう→水中にしがいを投じてほおむること)にしてやろうかい」
 大さわぎをして、ふと気がつくと、いつのまにやら黒雲は消えうせ、まるで何事もなかったかのように、青空がひろがっています。
と、風にのって、陸地の方から人びとのざわめきが流れてきました。
 見ると、浜辺におおぜいの人が集まっています。
(どうやら、浜の人たちのあのさわぎと、この老婆の死体とは関係がありそうだ)
 船がしらは、さっそく小船をおろすと、浜の方へようすを見せにやりました。
 しばらくすると、ひとりの男をのせてもどってきました。
 男は、老婆の死体をみると、
「おはずかしいことでございますが、これは、わたくしの母でございます」
 そういって、はらはらとなみだをこぼしました。
「お聞きくださいまし。母は金貸しをいたしておりました。はじめのうちは近所の方に、ほんの小銭を用立てるていどでございましたが、だんだんよくがでてまいりまして、このごろでは、ただ金だけに目がくれ、人さまからは鬼ババとまでいわれるありさま。きょうも金のかたじゃと、年瑞(としは→ねんれいがひくい事を意味する言葉)もいかぬ娘をつれだして、人かいにわたそうとしたのでございます。ところが、とつぜん黒雲がおりてきて、あっというまに母ひとりさらわれて。・・・これも、悪業(あくぎょう→わるいおこない)のむくいなのでございましょうか」
 話しおわると、男は泣き泣き、老婆の死体を引き取っていきました。

おしまい

 前のページへ戻る

お話しの移動

・ 福娘童話集
・ 100物語 (こわ〜い話)

百 物 語

・   1話  〜  10話
・  11話  〜  20話
・  21話  〜  30話
・  31話  〜  40話
・  41話  〜  50話
・  51話  〜  60話
・  61話  〜  70話
・  71話  〜  80話
・  81話  〜  90話
・  91話  〜 100話

・ 101話  〜 110話
・ 111話  〜 120話
・ 121話  〜 130話
・ 131話  〜 140話
・ 141話  〜 150話
・ 151話  〜 160話
・ 161話  〜 170話
・ 171話  〜 180話
・ 181話  〜 190話
・ 191話  〜 200話

・ 201話  〜 210話
・ 211話  〜 220話
・ 221話  〜 230話
・ 231話  〜 240話
・ 241話  〜 250話
・ 251話  〜 260話
・ 261話  〜 270話
・ 271話  〜 280話
・ 281話  〜 290話
・ 291話  〜 300話

・ 301話  〜 310話
・ 311話  〜 320話
・ 321話  〜 330話
・ 331話  〜 334話


ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界