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百物語 第106話

あの世への迎え

あの世への迎え
福島県の民話 → 福島県の情報

 むかしむかし、会津(あいづ→福島県)の殿さまのもとに、直江山城守兼続(なおえやましろのかみかねつぐ)という家老(かろう)がいました。
 ある時、三室寺庄蔵(さんむろじしょうぞう)という山城守(やましろのかみ)の家臣(かしん)が、ささいなことから家来の一人を殺してしまいました。
 それを知った、殺された家来の身内の人たちは、
「家来だからといって、たいした事でもないのに、お手討(てうち→死刑)とはひどすぎる!」
と、うったえをおこしました。
 これをきいた、山城守(やましろのかみ)は、
「不欄(ふびん)なことをしたが、どうやっても死んだ者は帰らない。手厚くとむらい、それなりのお金でかんべんしてもらえ」
と、銀貨二十枚を、身内の者たちにあたえるようにいいました。
 けれども身内の者たちは納得せず、うったえをとりさげようとしません。
「わたしたちは、金などいりません。あくまでも、殺された本人をかえしていただきたいのです」
 それを知った城下(じょうか→町)の人々からも、同情(どうじょう)する声が高まってきました。
「身内のうったえは、もっともだ。直江さまは家臣をかばいすぎる!」
 すると山城守は、殺された家来の兄とおじ、おいの三人を呼びだして、こういいました。
「死んだ者をかえせというが、どうすればよいのじゃ。それほどまでにいうなら、本人を呼びもどすほかあるまい。すまぬがそなたたち三人で、これからエンマ大王のところへいってつれもどしてまいれ」
 山城守は三人を橋のたもとへつれていくと、そこで三人を切り殺してしまったのです。
 そして橋のたもとに、次のような立て札(ふだ)をかかげました。
《わが家臣、三室寺庄蔵が家来を成敗(せいばい)したが、身内の者たちがなげき悲しんで本人をどうしても呼びかえしてくれと申してきかない。そこで、身内の者の三人をむかえにやることにした。エンマ大王さま、先にそちらへいった者を、ぜひ三人にかえしてくださるよう、おそれながら願いあげる。慶長二年(一五九七年)二月七日 エンマ大王殿へ 直江山城守兼続》
 この立て札をかかげてから、町の人たちはおそろしくなって何もいわなくなりました。
 山城守のやりかたを、
「さすがは山城守!」
と、ほめたたえる者もいましたが、
「ずいぶんと身勝手(みがって)で残酷(ざんこく)な処置(しょち)だ!」
と、山城守をおそれて、うらむ者たちもずいぶんいたそうです。
 ちなみに山城守は、それから二十二年後の十二月十九日に、六十歳でなくなりました。

おしまい

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