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百物語 第129話

あき寺の大入道

あき寺の大入道

 むかしむかし、旅の僧がやってきて、村はずれのあき寺へとまることにしました。
やねはかたむき、かべははんぶんほどもくずれおちていて、まるでおばけやしきです。
(それにしても、なんてひどいあれようだ)
僧はクモの巣をはらい、本堂のゆかの上にすわりました。
そのゆかも、あちこちがやぶれていて、ゆか下から草がのびています。
いろんなあき寺にとまりましたが、こんなひどい寺ははじめてです。
(まあ、草の上にねるよりはましだ)
僧は、旅のとちゅうでもらったにぎりめしを食べると、ほこりだらけのゆかの上へよこになりました。
やがて日がしずんで、あたりがくらくなりました。
その晩は空がくもっていて、月もでません。
風がでてきたらしく、庭の草がザワザワとゆれています。
僧は、なかなかねつけず、ゆかの上にすわりなおすと、ゆっくりお経をとなえはじめました。
すると、ゆかがゆれだし、ミシッ、ミシッという足音が近づいてきます。
僧はにもつのなかから、煮たき用の鉄なべをだして頭にかぶり、しっかりとつえをにぎりました。
顔をあげると、目の前に大入道がたっています。
目玉が三つに、大きな歯がふたつ。
大入道は目玉をギラギラ光らせながら、僧のそばへ近よると、いきなり太いうでをふりあげ、僧の頭をたたきました。
ガーン!
頭にかぶった鉄なべが、大きな音を立てました。
「なんて、なんてかたい頭だ」
鉄なべをかぶっているとも知らず、大入道はおどろいたようにいいました。
それでも僧はつえをつかんだまま、ジッと大入道をみあげました。
するとふたたび大入道がいいました。
「さっさと、でていけ! ここはわしのすまいだ。ぐずぐずしているとひねりつぶすぞ!」
そのとたん、僧はつえをつかんでとびあがるなり、
「かぁぁぁっ!」
と、さけんで、大入道の頭につえをふりおろしました。
「ギャーッ!」
ふいのこうげきに、大入道はドタリと、僧の前にたおれこんできました。
僧はその頭めがけて、
「えい、えい、えい!」
と、つえをうちおろしました。
すると、大入道のすがたがみるみるきえて、なぐられた頭が小さな木のかたまりのようになりました。
僧は、そのかたまりをつかむと、庭にむかって力いっぱいなげつけました。
ガシンッ!
かたまりは、庭にある大きな石にあたってわれました。
それっきり、あたりはしずかになりました。
あやしいものは、もう二どとでてくるようすがありません。
それでも、僧はねむることができず、朝までゆかの上にすわっていました。
やがて夜が明けました。
「さて、大入道の正体は、いったい、なにものなのか?」
僧が明るくなった庭へでてみると、なんと、まっぷたつにわれた古げたがころがっていました。
「タベの大入道は、げたのおばけであったか」
僧は、われた古げたを本堂のすみにおくと、ゆっくり寺をでていきました。

おしまい

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