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        福娘童話集 > 日本のこわい話(百物語) 
         
        百物語 第137話 
          
          
         
めいどからかえってきたおくさん 
      
       むかしむかし、一人のお坊さんが、旅から旅の毎日をすごしていました。 
 ある日のこと、お坊さんがさみしい一本道を歩いていくと、日がくれてきました。 
「このままいけば、町があるはずだから、こんやは町でとまることにしよう」 
 お坊さんは道ばたのお墓のところで、一休みすることにしました。 
 草むらに腰を下ろして、足を休めていると、後ろの方から、ギギギーッと、変な物音がします。 
 ふりむくと、かんおけのふたをおしあけて、白いきものの女の人がでてきました。 
「ゆ、ゆうれい。なむあみだぶつ、なむあみだぶつ、なむあみだぶつ・・・」 
 お坊さんはじゅずをならして、ねんぶつをとなえました。 
 すると女の人は、お坊さんにちかづいてきて、 
「どうか、たすけてください。からだがあつくてたまりません」 
と、頭をさげました。 
 お坊さんは、あいてがゆうれいだとおもっているので、 
「まよわず、じょうぶつなさい。なむあみだぶつ、なむあみだぶつ・・・」 
 さらに、ねんぶつをとなえました。 
 ところが女の人は、 
「わたしはまだ、ゆうれいではありません。じつはきのう、いったん、いきをひきとったので、このおはかにうめられました。わたしのたましいはからだからぬけだして、ひろい野原のようなところをあるいていったのです」 
と、ふしぎな話をはじめました。 
「あてもなく歩いていると、おそろしい鬼たちが現れ、わたしをつかまえて、えんま(→詳細)さまのところへ連れていきました。えんまさまは、わたしをジロジロとながめて、『おまえはまだ、ここにくるのははやい。おまえの寿命は、まだまだのこっておる』と、いったのです。それから、わたしをつれてきた鬼たちに、『すぐに、火の車に乗せて、送り返せ』と、いいつけました」 
「ほう、それで、からだがあついと言われたのですね」 
「はい。火の車の炎につつまれて、『あつい、あつい』ともがいているうちに、ここに戻ってきたのです」 
「なるほど。それで、かんおけをやぶって、ふたたび、この世にもどったというわけじゃな」 
「はい。どうか、わたしを家につれていってください」 
「わかった、わかった」 
 お坊さんは女の人をおんぶして、道をあんないさせました。 
 女の人の家は、町のなかの大きなお店でしたが、お店は戸をしめきって、かなしみにしずんでいました。 
 そこに、たびのお坊さんが、おそうしきをすませたばかりのおくさんをつれてきたので、ビックリ。 
 はじめはあやしまれましたが、 
「こんなありがたいことが、またとあろうか」 
と、お店の人たちはよろこんで、さっそく、おいわいのせきがつくられました。 
      おしまい 
         
         
        
       
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