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百物語 第182話

あの世で頼まれたことづけ

あの世で頼まれたことづけ
奈良県の民話奈良県情報

 むかしむかし、ある山奥のお寺で、一人の若いお坊さんが修行(しゅぎょう)をしていました。
 お坊さんは何日も食事をせずに、心の中でお経を唱え続けていました。
 そんなある日の事、お坊さんの体が突然動かなくなって、息が止まってしまいました。
 するとお坊さんの魂が体から離れて、フワフワと空中にただよいはじめたのです。
 広いお寺の境内(けいだい)をただよって、風にふかれて林の中に入っていくと、むこうから年を取ったお坊さんの魂がやってきました。
 年を取ったお坊さんの魂は、ニコニコした顔で、
「どうじゃ。わしについてこぬか。あの世を案内してやるぞ」
と、若いお坊さんの魂を、あの世見物に連れて行ってくれたのです。
 あの世の広場を見ていると、重い石を運ばされたり、ウシにされたり、オニに追いかけられてムチで叩かれている人たちが、たくさんいました。
 そこへ、怖そうな身なりをした人や、白い衣を着たやさしい顔の人など、色々な姿の人たちが通りかかりました。
「おっほほほほ。これは珍しいものに出会ったな。あの一行はな、こっちの世へ来て、新しく神さまになった人たちじゃ。戦の神もおるし。学問の神もおる。うらみの神、たたりの神、幸せの神、病の神と、色々な神がおる」
 年を取ったお坊さんの魂が、ていねいに教えてくれました。
 しばらくすると、おじいさんたちの一行が通りかかりました。
 すると、その人たちが近よってきて、
「わしは谷川村(たにかわむら)の善兵衛(ぜんべえ)です。元気でいるから心配するなと、ぜひ、伝えてくだされ」
「わしは大沼村(おおぬまむら)の平助(へいすけ)です。秋になったら大好物のカキを供えてくれと、伝えてくだされ」
 などと、たくさんのことづけを頼まれました。
 若いお坊さんの魂は、それを聞いて頷きました。
「おや、ずいぶんと頼まれたな。このまま連れて行こうかと思ったが、頼まれた以上、ちゃんと伝えてやらなければならんな」
 年を取ったお坊さんの魂は、そう言ってにっこり笑うと、
「わしは用事があるから、先に帰りなさい。そこが近道じゃ。どこまでもどこまでも、まっすぐ行けばよい」
と、帰りの道を教えてくれました。
 そしてまっ暗な岩穴の中をフワフワ飛んで行くと、いつの間にか魂は、若いお坊さんの体に吸い込まれていました。
 若いお坊さんは息をふきかえして、再びこの世に生きかえったのです。
 息が止まってから、何と十三日がたっていたそうです。
 息をふきかえした若いお坊さんは、それから、あの世で頼まれたことづけを伝える為に、あちこちの村々を尋ね歩いたという事です。

おしまい

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