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百物語 第273話

大うなぎのたたり

大うなぎのたたり
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸(えど→東京都)に、うなぎの大嫌いな左官屋(さかんや)がいました。
 左官屋というのは、家の壁をぬる職人のことです。
 仕事に行って、うなぎのかば焼きを出されたりすると、見ただけで気分が悪くなってしまうのです。
 左官屋仲間には、
「もったいない。せっかくのごちそうを」
と、腹をたてる人もいましたが、食べる気がしないのですから、仕方ありません。
 それというのも、左官屋には、どうしてもうなぎを食べられない訳がありました。
 なんとこの左官屋は、左官屋になる前は、うなぎ屋のむこになっていたのです。
 ある日、このむこは、おかみさんの父親である店の主人と一緒に、うなぎの買い出しに出かけました。
 いつになく活きのよさそうなうなぎばかりで、にこにこしながら家にもどってきたのですが、いけすのかごへ入れようとしたとき、大変な大きなうなぎが二匹いるのに気づきました。
「おかしいな? さっき買ったときは、こんなうなぎはいなかったはずだが」
 主人が首をかしげ、
「たしかに、こんなでっかいうなぎはいませんでしたよ」
と、むこも不思議に思いました。
「でも、いいじゃないですか。ほら、うちによく来るお客で、でっかいうなぎの好きな人がいるでしょう。あの人が来るまでとっておきましょうよ」
「そうだな。あの人ならよろこぶだろう」
 すると次の日、大きなうなぎの好きな客が、仲間をつれてやってきました。
 主人が昨日のうなぎの話をすると、客はよろこんで、
「すぐに焼いてくれ」
と、言います。
 主人はさっそく、いけすのかごの中から、特別に大きなうなぎを一匹捕まえてきました。
 ところがどうしたわけか、うなぎの頭に、うまくきりを刺す事が出来ません。
 やっとさしたと思ったら、あやまって自分の左手をさしてしまいました。
 主人は仕方なく、料理をむこにかわってもらいました。
 むこが左手でうなぎをおさえつけようとしたら、くるくるとうなぎが巻き付いて、ものすごい力でしめつけてきます。
 手がしびれて、きりをさすどころではありません。
「なるほど、こいつはすごいぞ。とても、わたしの手にはおえない」
 しかし、今さら客にことわるわけにもいきません。
 困り果てたむこは、思わずうなぎに言いきかせました。
「これうなぎ、いくらあばれても、お前は人に食われるより仕方がないのだ。頼むから、わたしにさかれておくれ。もし言うことを聞いてくれたら、二度とこんな仕事をしないから」
 すると、どうでしょう。
 あれほど暴れていたうなぎが、ぴたりと動かなくなったのです。
「ありがてえ。今のうちだ」
 むこは急いでうなぎの頭にきりをつきさし、お腹をさいて料理しました。
 ところが焼きあがった大うなぎのかば焼きを食べたとたん、客の気分が悪くなりました。
「なんだ。このかば焼きは!」
「全く! おれたちを殺そうというのか!」
 客はかんかんに怒って、
「ここへは、二度と来るものか!」
と、店を飛び出していったのです。
 さて、その晩の真夜中をすぎたころ、裏の川の方から、
 きゅっきゅっ。きゅっきゅっ。
と、いう、おかしな鳴き声がします。
 不思議に思ったむこが起きて見にいくと、鳴き声は、いけすのかごの中から聞こえてくるではありませんか。
「はて? うなぎの鳴き声にしては大きすぎるが」
 むこが思いきって、かごのふたをとってみたら、なんと何百匹といううなぎがヘビのようにかま首をもたげて、こっちをにらんでいるではありませんか。
「ぎゃあーっ!」
 むこはそれっきり、気を失ってしまいました。
 その声を聞いてかけつけてきた店の主人も、恐ろしいうなぎの姿を見てびっくりです。
「う、う、うなぎの化け物だ!」
 そのとたん、うなぎは次々とかごの中から飛び出して、かま首をもたげたまま川をくだっていったのです。
 やっと気がついたむこは、もう二度とうなぎを見たくないと思いました。
 それに、殺したうなぎとの約束も思い出すと、じっとしてはいられません。
 次の日の朝、だまってこの店を飛び出して、親戚の家へ逃げていきました。
 こうして一年ばかりすぎたころ、むこのところへ主人の店の小僧が来て、
「大だんなさまが病気で死にそうです。早く帰ってください!」
と、言うのです。
 仕方なく店へ行ってみたら、店はあいかわらずはんじょうしていました。
 店をとりしきっているのは、おかみさんと若い男で、自分のだんなが来たというのに、おかみさんは全くの無視です。
「仕方ないな。あいつを捨てて、だまって飛び出したのだから」
 むこはあきらめて、主人のところへ行きました。
 主人はまるで、かれ木のようにやせおとろえた姿で、うすい布団に寝かされていました。
 しかもそこは納戸(なんど→物置部屋)で、日もあたらず、むこを迎えに来た小僧が一人で看病しているというのです。
「実の親をこんなところへ押し込むとは、なんてひどい娘だ!」
 むこはかんかんに腹をたて、すぐ主人を座敷へ移して医者を呼びました。
 しかし主人は、もう薬もおかゆものどを通りません。
「どうして、こんな体になったのだ?」
 小僧にたずねても、首を横にふるばかりです。
 何でも、あのうなぎを殺した日から、急に寝込んでしまったそうです。
 主人は一言もしゃべることができず、うなぎみたいに下あごをふくらませて、ぱくぱく息をするだけです。
「これはきっと、大うなぎのたたりにちがいない」
 むこはお坊さんを呼んできて、殺した大うなぎのために、お経をあげてもらいましたが、そのかいもなく、主人は死んでしまいました。
 そこでむこは主人の葬式をすませたあと、うなぎ屋の親戚に集まってもらい、正式にこの家を出て左官屋になったという事です。

おしまい

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