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百物語 第277話

入らず山の鬼婆

入らず山の鬼婆

 むかしむかし、ある山のふもとの村に、キノコとりが三度のめしよりも好きだという、おじいさんがいました。
 ある秋の日、おじいさんはかごを背負って、いつもの山へキノコとりに出かけました。
 けれど前の日に他の人がとったあとらしく、キノコはまったく見つかりません。
「せっかく来たのに、このまま手ぶらで帰るのもくやしいな。・・・そうじゃ、入らず山へ行ってみよう。この山には鬼婆がおるというが、明るいうちに帰ればどうということもあるめえ」
 おじいさんが入らず山へ入ってみると、シメジでも、マイタケでも、シイタケでも、そこら中に生えています。
「これはすごい。だれも取らんから、キノコがいくらでも生えておるぞ」
 おじいさんがむちゅうでとっているうちに、日がくれてしまいました。
「さて、かごがいっぱいになったはいいが、帰りの道がわからん。仕方ない。一晩とまっていくか」
 おじいさんは大きな木のうろを見つけて入り込み、たき火をはじめました。
 そしてそのたき火で、キノコをあぶって食べていると、
「やい。おらにも食わせろ!」
 いきなり、鬼婆が入り込んできました。
 二本の角が生えたぼさぼさの白髪頭に、らんらんと光るまっ赤な目玉、そして耳までさけた大きな口には、ギザギザの歯が生えています。
「へっ、へい、ただいま、焼きますで」
 おじいさんがふるえながらシシタケをとりだすと、鬼婆は怖い顔で言いました。
「シシタケ! おらでさえ、めったにとれんシシタケをよくもとったな。入らず山はおらの山だ。山を荒らして無事にすむとは思うなよ。まあ、足の一本ぐれえはもらわんとな」
「そんな、どうかごかんべんを。入らず山には二度と入りません。シシタケもほかのキノコも全部さしあげますから、どうか見逃してくだせえ」
 おじいさんがいくらあやまっても、鬼婆は許してくれません。
 そのときです。
 たき火がパチッとはねて、鬼婆の大きな右目にとびこみました。
「あちぢちぢっ!」
 鬼婆がとびはねているすきに、おじいさんは逃げだしました。
「まてーっ、逃がしはせんぞー!」
 鬼婆は右目をおさえながら、おいかけてきました。
 そのはやいこと、鬼婆はたちまち追いついてきます。
 もしつかまったら、命はありません。
 おじいさんは、ありったけの声をはりあげました。
「山神(やまがみ)さま〜! どうかお助けくだせえ〜!」
 すると、山神さまをのせた紫色の雲がすーっとおりてきて、おじいさんをすくいあげてくれました。
 鬼婆はくやしがりましたが、空の上ではどうすることもできません。
 山神さまのおかげで命びろいをしたおじいさんは、その後、山へ行くたびにお礼のおそなえ物を持っていきました。
 でも入らず山には、二度と行かなかったそうです。

おしまい

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