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百物語 第291話

八雲の水

八雲の水
京都府の民話 → 京都府の情報

 むかしむかし、ある村に、与八と言う、とても親孝行な若者がいました。
 与八は毎日、年老いた両親の為に、朝早くから夕方遅くまで一生懸命に働きます。
 そんなある日の帰り道、急な雨に降られてびしょぬれになった与八は、走って家に帰りましたが、その途中、ふと見慣れないわき水がわいていたので、与八はそれを手の平にすくうと、ごくりと飲み干しました。
「うまい。今度この水を、父や母に持って帰ろう」
 そして再び、家への道を急ぎました。
 でもその夜に風邪をひいてしまい、そのまま三日三晩苦しんだ後、与八は死んでしまったのです。

 さて、死んだ与八は気がつくと、多くの死人たちと一緒に、暗い道をとぼとぼと歩いていました。
 そして何日も何日も休まずに歩くと、大きな血の川が流れていました。
「これが、三途の川か」
 そこで与八は、お葬式の時に棺に入れてもらった六道銭(ろくどうせん)と呼ばれる三途の川の渡し賃の六文を取り出すと、三途の川の番人に渡して川を渡してもらいました。
 そしてその先には大きな建物があり、その中で最初に死んだと言われる閻魔大王が、閻魔帳と呼ばれる、人が今まで行ってきた善悪の書かれた帳面を調べて、死者の天国行きか地獄行きかを決めていたのです。
 与八が順番に並んでいると、前の方にいた人が閻魔大王に呼ばれ、前に進み出て名前を言いました。
 すると閻魔大王が、
「お前は、八雲の水を飲んできたか?」
と、尋ねました。
 そこで前の男が、
「いいえ、飲んでいません」
と、答えると、閻魔大王は苦い顔で、
「それなら、そっちへ行け」
と、地獄へつながる鉄の門を開いたのです。
 その次の死人が、同じ質問に、
「飲みました」
と、嘘をつくと、閻魔大王は突然、大きな釘抜きを机の下から取り出して、嘘をついた死人の舌を抜き取り、
「嘘をつくような奴は、地獄行きだ!」
と、その死人を地獄へ送ったのです。
 さて、次はいよいよ、与八の番です。
 閻魔大王は与八に、
「八雲の水を飲んできたか?」
と、尋ねました。
「いいえ、飲んで・・・」
と、与八は言いかけて、あの湧水の事を思い出しました。
(もしかすると、あの湧水が、八雲の水なのだろうか?)
 そこで与八が、
「飲んできました」
と、答えると、閻魔大王は満面の笑みを浮かべて、
「よし、お前はこっちへ来い」
と、地獄とは別の方角へ案内してくれたのです。
 そこは明るく暖かで、何とも言えない良い香りの蓮の白い花咲く池がありました。
 こここそが、極楽なのです。
 そしてそこには、とてもやさしそうな人が大勢いて、与八は極楽で、幸せに暮らしたということです。

 八雲の水と言うのは、この極楽の蓮の花が咲く池の水が地上に流れ出たもので、極楽へ行くことが出来る善人は、知らず知らずのうちに、この八雲の水を口にすると言われています。

おしまい

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