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百物語 第292話

ヘビのうらみと老母

ヘビのうらみと老母
東京都の民話東京都情報

 むかしむかし、江戸のある町にすむ役人が、用事で大阪へ出かけていきました。
 留守宅には、年老いた母親と嫁さんが残っています。
 さて、ある日の昼下がりの事です。
 嫁さんが手洗いに入ろうとすると、からだをくねらせながら、茶色のまだらもようのヘビが窓から外へ出ていこうとしていました。
「キャー!」
 嫁さんは、思わず声をあげました。
 その声を聞いた老母が飛んでいくと、ヘビは窓から姿を消した後でした。
 でもヘビがはった手洗いの壁には、ピカピカと光る跡がついていました。
 気味が悪いので水で洗いましたが、いくら洗ってもヘビの跡は消えません。
 それから、五日後の夜の事です。
 老母がふと目を覚ますと、枕元に大きなヘビがいました。
 老母は少しも怖がらず、ふとんの上にすわりなおすと、ヘビにむかって静かにいいました。
「よくお聞き。お前はこの間、嫁をおどかしたヘビだね。なにかわたしたちに、うらみでもあるのですか? 息子がいない間は、わたしがこの家の主です。言いたい事があるなら、申してみなさい。ないのなら、もう出てきてはいけません」
 するとヘビは、ぺこりと頭を下げて、部屋から出ていきました。
 次の日の夜、老母の夢に茶色のまだらもようのある着物を着た、りりしい若者が現れました。
「わたしは昨夜のヘビです。うらみがあれば申せとの事でしたので、こうしてやってきました」
 そういって、こんな話をしました。
「この間の事です。庭で見つけたカエルが一匹、こちらの手洗いの中に逃げこんだのです。追いかけて捕まえようとしたら、あなたの息子に頭から小便をかけられました。そのためにあちこちのうろこの色が茶色にかわってしまい、仲間はずれにされて、すみつくところがなくなってしまったのです。そのうらみをはらそうとしましたが、あなたにいわれて、こうしてお話しにきたのです」
「なるほど。それは気の毒な事。息子の事は、お詫びします。しかし、すみつくところがないのは困りましたね」
「お詫びをしてくださるのなら、どうかお庭のすみに、小さな社をつくってください」
「わかりました。ではそのようにしましょう」
 老母の言葉にヘビの若者は頭を下げると、すーっと消えてしまいました。
 さて次の朝、目を覚ました老母に嫁さんは不思議な事を言いました。
「お母さま。夢の話ですが、あのヘビが若者の姿になって、お母さまにうらみのわけを話し、お庭に小さな社をつくってほしいといいました」
 それを聞いた老母は、嫁さんに大きく頷くと。
「わたしも、同じ夢を見ました。ではさっそく、社をつくりましょう」
 そこで二人はすぐに大工を呼んで、庭のすみに小さな社をたてました。
 するとその日からヘビは姿を現さなくなり、手洗いの壁についた不気味に光るヘビの跡も、きれいに消えてなくなったという事です。

おしまい

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