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第 001話
ゆきおんな
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むかしむかし の、さむいさむい きたぐに での おはなし です。
あるところに、しげさく(もさく) と おのきち と いう きこり の おやこ が すんでいました。
この おやこ、やま が すっぽり ゆき に つつまれるころ に なると、てっぽう を もって りょうに でかけていくのです。
あるひ の こと、おやこ は いつものように ゆきやま へ はいっていきましたが、いつのまにか そら は くろぐもに おおわれて、ふぶき と なりました。
ふたり は なんとか、きこりごや を みつけました。
「こんやは ここで とまる より、しかたあるめえ」
「うん だなあ」
ちろちろ と もえる いろり の ひ に あたりながら、ふたり は ひるま の つれからか、すぐにねむりこんで しまいました。
かぜ の いきおい で と が がたん と ひらき、ゆき が まいこんできます。
そして、いろり の ひ が ふっと きえました。
「う〜、さむい!」
あまり の さむさに め を さました おのきち は、そのとき、ひとかげ を みたのです。
「だれじゃ、そこに おるのは?」
そこに すがた を あらわしたのは、わかくうつしい おんなのひと でした。
「ゆきおんな!」
ゆきおんな は ねむっている しげさく(もさく) の そば に たつと、くち から しろい いき を はきました。
しげさく(もさく) の かお に しろいいき が かかると、しげさく(もさく) の からだ は だんだんと しろく かわっていきます。
そして ねむったまま、しずかに いき を ひきとってしまいました。
ゆきおんな は、こんどは おのきち の ほうへと ちかづいてきます。
「たっ、たすけてくれー!」
ひっしで にげようとする おのきち に、なぜか ゆきおんな は やさしく いいました。
「そなた は まだ わかわかしく、いのち が かがやいています。
のぞみどおり、たすけてあげましょう。
でも、こんや の こと を もしも だれか に はなしたら、そのときは、そなた の うつくしい いのち は おわってしまいましょう」
そういうと ゆきおんな は、ふりしきる ゆき の なか に すいこまれるよう に きえてしまいました。
おのきち は、そのまま き を うしってしまいました。
やがて あさ に なり め が さめた おのきち は、ちち の しげさく(もさく) が こごえじんでいるの を みつけたのです。
それから、いちねん が たちました。
ある おおあめ の ひ、おのきち の いえ の まえ に ひとり の おんなのひと が たっていました。
「あめ で、こまって おいでじゃろう」
きだて の いい おのきち は、おんなのひと を いえ に いれてやりました。
おんなのひと は、おゆき と いう な でした。
おのきち と おゆき は ふうふ に なり、かわいいこども にも めぐまれて、それはそれは しあわせ でした。
けれど、ちょっと しんぱい なのは、あついひざし を うけると、おゆき は ふらふら と たおれてしまうのです。
でも、やさしい おのきち は、そんな おゆき を しっかりたすけて、なかよく くらしていました。
そんな あるひ、はりしごと を している おゆき の よこがお を みて、おのきち は ふっと とおいひ の こと を おもいだしたのです。
「のう、おゆき。わしは いぜんに、おまえ の ように うつくしい おなご を みたこと が ある。
おまえ と、そっくりじゃった。
やまで、ふぶきに あっての。
そのときじゃ、あれは たしか、ゆきおんな」
すると とつぜん、おゆき が かなしそうに いいました。
「あなた、とうとう はなしてしまったのね。あれほど やくそくしたのに」
「どうしたんだ、おゆき?」
おゆき の きものは、いつのまにか しろく かわっています。
ゆきおんな で ある おゆき は、あのよる の ことを はなされてしまったので、もう にんげん で いることが できないのです。
「あなた の ことは、いつまでも わすれません。
とても、しあわせ でした。
こどもを、おねがいしますよ。
・・・では、さようなら」
そのとき、と が ばたん と ひらいて、つめたいかぜ が ふきこんできました。
そして、おゆき の すがたは、きえたのです。
おしまい
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