福娘童話集 > 日本昔話 > その他の日本昔話 >ヨモギとショウブ 端午の節句のお話
第 74話
ヨモギとショウブ
端午の節句の昔話
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
制作: フリーアナウンサーまい【元TBS番組キャスター】
むかしむかし、ある若い猟師が狩りに行くと、突然鬼が襲いかかって来ました。
「うまそうな人間だ。食ってやるからかくごしろ」
猟師はすぐに鉄砲を構えると、
ズドーン!
ズドーン!
と、鉄砲の玉を鬼に撃ち込んだのですが、鬼は撃たれても平気な顔をしています。
「わっははははは。そんな物が、このおれさまに通用するものか」
猟師は鉄砲を放り投げると、一目散に逃げ出しました。
「待てー! 逃がさぬぞー!」
鬼は猟師を追いかけましたが、猟師があわててヨモギの原っぱに逃げ込むと、鬼はそれを見て立ち止まりました。
「火じゃ、火が燃えておるぞ!」
ヨモギの葉っぱが炎の形に似ていたので、鬼は勘違いをしたのです。
何とか助かった猟師ですが、しかしいつまでもヨモギの原っぱに隠れているわけにはいきません。
猟師はヨモギの原っぱから抜け出すと一目散に走り出しましたが、でもすぐに鬼に見つかってしまいました。
「待てー! おとなしく食われろー!」
そして鬼に捕まりそうになった時、猟師は菖蒲(しょうぶ)の茂みに飛び込んだのです。
すると鬼は、またも立ち止まりました。
「剣じゃ! 地面から剣が生えているぞ! しかし、あいつはなぜ平気なんじゃ?!」
菖蒲の葉っぱが剣の形に似ていたので、鬼は勘違いをしたのです。
そこで猟師が菖蒲の葉を両手一杯に抱えて茂みの外へ出て来ると、鬼は、
「剣が、剣が歩いてくるー!」
と、震えながら逃げて行きました。
その日がちょうど五月五日だったので、今でも五月五日の端午(たんご)の節句(せっく)には、魔除けとしてヨモギと菖蒲を軒先に吊す様になったのです。
おしまい
→ よもぎ(今日の誕生花)
→ しょうぶ(今日の誕生花)
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