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第58話

パーベルじいさんの小石

パーベルじいさんの小石
ブルガリアの昔話 → ブルガリアの国情報

 むかしむかし、パーべルじいさんという、びんぼうなヒツジ飼いがいました。
 ほんとうにびんぼうで、へやを明るくするランプも持っていません。
 でも、おじいさんは小さな小屋に、小イヌと小ネコといっしょに、たのしく暮らしていました。
 ある日、いつものようにヒツジをつれてあるいていると、森のなかから悲しそうな声がきこえてきました。
 パーべルじいさんは、声のするほうへいってみました。
 すると、森の木がもえていて、一ぴきのまだらトカゲが、ほのおにつつまれてないているのです。
 おじいさんはかわいそうに思って、ヒツジ飼いの長いつえを、トカゲのほうにさしだしてやりました。
 トカゲはつえをつたって、ぶじに火のなかからにげだすことができました。
「命をすくってくださって、ありがとうございます。わたしはトカゲの王の娘です。わたしについていらしてください。お日さまのようにかがやく小石を、お礼にさしあげましょう」
 こういうと、トカゲは草の上をスルスルとはっていきました。
 トカゲのほらあなにつくと、
「小石をとってきますから、ここでまっていてください」
と、いって、トカゲの王女は中へきえていきました。
 もう日がくれて、森はまっくらです。
 トカゲが小石をくわえてほらあなから出てくると、たちまちあたりは、昼のように明るくなりました。
 もう夜があけたのかと思って、小鳥たちが朝の歌をうたいだしたほどです。
「この小石で、地面を三回たたいてのぞみをとなえてごらんなさい。どんなことでもかなえてくれます」
と、トカゲの王女はいいました。
 家へかえるとおじいさんは、さっそく小石をとりだしてみました。
 すると、へやじゅうがパッと明るくなりました。
 小イヌと小ネコは、あまりにもまぶしくて、前足で目をかくしてしまったほどです。
 夕食をすませたあとで、おじいさんは一人ごとをいいました。
「このうえ、小石に願いをかけることなんてあるかな? わしは家もヒツジも持っている。それにきょうからは明るいへやで、夕食をくえるようになった」
 それでもおじいさんは、いろいろなことが頭にうかんで、なかなかねむれません。
「やっぱり、あの小石にたのんでみようかの。だが、はて、なにをたのんだものか。・・・おお、そうじゃ。白い大理石(だいりせき)のご殿をたのんでみるとしよう」
 おじいさんはねどこからおきあがると、たなの上の光る小石をとりました。
 そして、三回地面をたたいていいました。
「白い大理石のご殿よ。わしの前に出てこい!」
 するとアッというまに、おじいさんのあばら家は消えて、そこにすばらしい白い大理石のご殿がそびえました。
 かべはまるで鏡のようにピカピカで、イスや机は象牙(ぞうげ)、お皿や茶わんは金でできています。
 パーべルじいさんは目をまるくして、ご殿の中を、見物してあるきました。
 そして、小石をふところにしまって、フカフカの羽ぶとんをしいたねどこに横になりました。
 ちょうどその夜、となりのイワンがやってきました。
「じいさん、これはどうした? このすごいご殿は?」
「小石がたてた、ご殿じゃよ」
「小石だと? 見せてくれ。小石がどうやって、こんなご殿をたてたんだね?」
 パーべルじいさんは小石を見せて、わけを話してきかせました。
 あれこれと話しているうちに、二人ともねむたくなりました。
「イワン。こんやはここにとまったらいい」
 おじいさんが、そういったので、イワンは、おじいさんといっしょに、羽ぶとんでねることになりました。
 ところがイワンはねむらないで、おじいさんがねつくのをジッとまちました。
 そしておじいさんのふところから小石をとると、三回地面をうっていいました。
「四人の力もち出てこい。ご殿をもちあげて、ドナウ川のむこうまではこんでいけ!」
 たちまち四人の力もちがあらわれて、ご殿をもっていきました。
 イワンは小石をもって、にげだしました。
 つぎの朝、パーべルじいさんは目をさましてビックリ。
 ご殿も小石もなく、もとのままのあばら家に小イヌと小ネコがいるだけです。
 おじいさんはかなしくて、泣きだしました。
 ヒツジたちもいっしょに、メエメエとなきました。
 小イヌと小ネコも、かなしくなりました。
 そして小ネコが、小イヌにいいました。
「おじいさんの小石、ぼくたちでさがしてあげようよ」
「そうだ。いこう」
 小ネコと小イヌはいそいででかけると、ドナウ平野をすぎてドナウ川に出ました。
 小ネコは泳げないので、小イヌの背中にのってドナウ川をわたりました。
 またあるきつづけて、やっとご殿につきました。
 二ひきは庭にかくれて、日がくれるのをまち、こっそりまどからしのびこみました。
 イワンは小石を口の中にかくして、羽ぶとんの上でねています。
「いいことがあるよ。コショウ入れにしっぽをつっこんで、そのコショウのついたしっぽで、イワンのはなをくすぐってやるのさ」
 小ネコはこういうと、さっそくとりかかりました。
 コショウ入れにつっこんだしっぽで、イワンのはなをくすぐりはじめたのです。
「ハッ、ハッ、ハックション!」
 イワンは、大きなクシャミをしました。
 そのいきおいで、小石は口からとびだしました。
 小ネコはすばやく小石をくわえて、小イヌといっしょににげだしました。
 ドナウ川までくると、また小ネコは小イヌの背中にのりました。
 ところが川のまん中までくると、小イヌがいいました。
「ぼくにも、その石見せてくれよ」
「いまは、だめだよ」
「いますぐ見せてくれ。さもないと、水の中におっことしてやるよ」
 小ネコはビックリして、小石を小イヌにわたしました。
 そのとき、小石はツルッとすべって、水の中におちてしまいました。
 二ひきは岸にあがって、泣きだしました。
 そこへ、つりざおをもった漁師がとおりかかりました。
 漁師は、二ひきがおなかをすかして泣いているのだと思って、すぐに大きなさかなをつってくれました。
 小イヌと小ネコは、そのさかなをつつきはじめました。
 すると、どうでしょう。
 さかなのおなかから、小石が出てきたじゃありませんか。
 小イヌと小ネコは大よろこびで、パーべルじいさんのところへかえりました。
 おじいさんは、まだ泣いていました。
 小ネコと小イヌは、おじいさんの頭の上に小石をおとしました。
 その光を見たとたん、おじいさんは小石をとって、三回地面をたたいていいました。
「たったいま、イワン出てこい! 袋にはいって出てこい!」
 袋にはいったイワンがパッとあらわれると、おじいさんはつえで、袋をさんざんぶちのめしてから、イワンを追いはらいました。
 おじいさんは、小石をさいふにしまっていいました。
「もう、ご殿もなにもいらぬ。どうせイワンにとられるだけじゃ」
 それいらいパーべルじいさんは、まい晩くらくなると、小石をたなの上におきました。
 小石はあかあかと、へやをてらしました。
 やがておじいさんが死ぬと、あのトカゲが小石をもっていってしまったということです。

おしまい

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