福娘童話集 きょうの日本昔話
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1月7日の日本の昔話

かべのなかから

かべのなかから

 むかしむかし、あるところに、なかのよいおじいさんとおばあさんがいました。
 ふたりは、あるばん、
「どちらか先に死んだら、おはかには入れないで、家のかべにぬりこめよう。そうすれば、いつまでもいっしょにいられる」
「そうですね。そして死んだものが、かべの中からよんだら、かならず、へんじをすることにしましょう」
と、やくそくしました。
 ところがまもなく、おばあさんがポックリ、あの世へいってしまったので、おじいさんはやくそくどおりにしました。
 おばあさんのなきがらを、ていねいに、かべにぬりこめたのです。
 すると、その日からまい日、
「おじいさん、いるかい?」
 かべのなかのおばあさんがききます。
「ああ、ここにいるよ」
「なにをしているんだい?」
「わらしごとだよ」
またしばらくすると、おばあさんがききます。
「おじいさん、いるかい? なにをしているんだい?」
 一日になんべんもきかれるので、おじいさんはだんだん、めんどうくさくなってきました。
「だれか、わしにかわって、へんじをしてくれるものはおらんかなあ」
 おじいさんがためいきをついていると、うまいぐあいに、たびの男がやってきました。
 ひとばん、とめてくれというのです。
「どうぞどうぞ。そのかわり、かべのなかから、『おじいさん、いるかい?』と、こえがしたら、『ああ、ここにいるよ』と、こたえてくれんか。『なにをしているんだい?』ときかれたら、てきとうに、こたえておいてくれりゃあいい」
「そんなことなら、おやすいごようですよ」
 たびの男がひきうけてくれたので、おじいさんはやれやれと、お酒をのみにでかけました。
 るすをたのまれた男は、かべのなかのおばあさんのこえに、いちいちこたえていましたが、なんどとなくきかれるので、めんどうくさくなって、
「うるせえなあ。おじいさんは、酒をのみにでかけたよ」
と、ほんとうのことをいってしまいました。
 するととつぜん、
 ガバッ!  と、かべがやぶれて、半分がガイコツの、ものすごい顔のおばあさんのゆうれいが、
「おじいさんはどこだ! おまえはだれだ!」
「うひゃあー! でたー!」
 男はおどろいたのなんの、命からがら逃げていきました。

おしまい

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