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1月14日の日本の昔話

おくびょうな男とゆうがおおばけ

おくびょうな男とゆうがおおばけ

 むかしむかし、あるところに、たいそうおくびょうな男がいました。
 夜になると、ひとりでは便所にもいけないありさまです。
 いつも夜なかに、おかみさんをおこしては、
「ばけもんがでるかもしれん、すまんが、いっしょにきてくれや」
と、たのむのでした。
「ばけものなど、おりゃあせんのに、いい年をして、ほんとにこまったもんだ」
 おかみさんはシブシブ、ちょうちん(→詳細)をさげて、かわや(べんじょ)へいくのですが、ねむくてかないません。
 まいばん、ねぶそくがつづいていました。
「夜なかでも、ひとりでかわやにいけるように、なんとかせんならん。なにか、よいかんがえはないもんじゃろか?」
 おかみさんは、あれこれかんがえました。
 そしてあるとき、大きなゆうがお(ウリ科の植物で、かんぴょうのもと)の実を、こっそり、かわやのなかにぶらさげておきました。
 男はそんなこと、まったく知りません。
 そのばんおそく、
「ばけもんがでるかもしれん、すまんが、いっしょにきてくれや」
 またまた、たのみましたが、
「ばけものなんて、おりゃあせんて。いつまでも、かわやくらい、ひとりでいけないようで、どうするね。もしものことがあれば、すぐにとんでいくから、こんやはひとりでいってみなさいな」
 おかみさんは、そういって、おきようとしません。
「・・・しかたねえ。ひとりでいってくるとするか。だいじょぶかなあ?」
 男はしかたなし、ひとりでかわやへでかけていきました。
 かわやはまっくらです。
 戸を開けてなかに入ろうとすると、ひたいになにか、ゴツンとぶつかるものがありました。
「ひえーっ! で、でたあ!」
 男はビックリして、こしをぬかしてしまいました。
 そこにおかみさんが、ちょうちんをさげてあらわれ、
「なにがでたっていうんです?」
 かわやを、あかるくしてみせました。
「い、いま、ば、ばけもんが、そこに」
 男がおそるおそる目をあけると、大きなゆうがおの実がぶらさがっていました。
「あら、ゆうがおの実じゃ、ありませんか。あしたの朝、おみおつけにしてたべましょうね」
 おかみさんはつぎの朝、ゆうがおの実をきざんで、おみおつけに入れました。
「こりゃあ、うまいもんじゃのう。これがばけものなら、まいばんでてもいいや。おれはもう、おっかねえものなどない」
 男はおみおつけを、三ばいもおかわりしました。
 それですっかり、こわいものしらずになって、
「どこかにばけものがでたら、おれがたいじしてやる」
と、いばるようになりました。
 すると、そのうち、
「村のとうげに、でっかいウシのばけものがでるそうだ。おそろしがって、夜はだれひとりとおるものがないってことだ」
 村に、うわさがひろがりました。
 男は、
「どうせまた、ゆうがおの実じゃろ。おれがたいじして、おみおつけにしてくってやる」
と、まっくらなとうげをのぼっていきました。
「いたいた。あいつだな」
 道のまんなかに、大きなウシのばけものが、どてっとねころんで道をふさいでいます。
「やい、ばけもの。おまえはゆうがおの実だべ。おれはちっとも、おっかなくねえぞ。じゃまだから、そこをどけやい」
 男がしかりつけると、
「おら、ゆうがおなんかじゃねえ」
 ばけものがいいました。
「それならいったい、なにもんだ?」
「おら、かねのばんつきをしているベコ(ウシ)だ。おらがねそべってるこの下には、金がめ、銀がめ、銅がめがうずまっとるんじゃ。おら、そのことをおしえてやろうとおもっとるに、ほかのものはおそろしがって、みんなにげちまう。なのに、おまえは、ちっともおそろしがらん。金がめ、銀がめ、銅がめ、みんなおまえにやる」
 ウシのばけものは、そういってきえました。
「ばけものがいったこと、ほんとだべか」
 男が、ばけもののいたあたりをほりおこすと、金、銀、銅のお金がピカピカひかって、まぶしいのなんの。
 男はそれをもちかえって、おかみさんと一生、しあわせにくらしました。

おしまい

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