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1月17日の日本の昔話
  
  
  
  あきやのゆうれい
 むかしむかし、ある町はずれに、ふるいあきやがありました。
   いく年かまえまでは、お金もちがすんでいましたが、いまはあれほうだいです。
   やねのかわらはずりおち、のきにはクモの巣(す)がはりめぐらされ、みるかげもありません。
   ところが、このあきやから夜になると、ゆうれいがでるとのうわさがひろがりました。
  「それがまあ、なんともきれいな女のゆうれいなんだ。年のころなら、十七、八。ヒュー、ドロドロドロと、あらわれるんだ」
   これをきいた気のつよい男が、
  「よし、おれがゆうれいのしょうたいをつきとめて、人をまどわさないようにしてやろう」
  と、イヌをつれて、ゆうれいのでるあきやへでかけていきました。
   でも、ゆうれいはイヌがきらいなのか、いっこうにあらわれません。
  「はやく、でてくれないかなあ」
   男がまちくたびれていると、つれてきたイヌがふるい井戸(いど→詳細)のそばで、やたらにほえました。
   そして、イヌはなにをおもったのか、井戸のまわりの土を、せっせとほりはじめたのです。
  「なんだ、ここに何かうまっているのか?」
   男もほるのをてつだうと、なんと、千両ばこがいくつもでてきました。
   そのとき、どこからともなく、女の人の声がしました。
  「イヌはにがてです。どこかへやってください」
  「やや、おまえがうわさのゆうれいだな。どこにいるんだ?」
  「イヌはにがてです。どこかへやってください」
  「よし、わかった」
   男がイヌを家の外に追い出すと、十七、八の女のゆうれいがあらわれました。
  「わたしは、この家ではたらく女中(じょちゅう→詳細)でした。この家の主人の悪い親類が、イタズラで主人の千両ばこをかくしたのですが、それをわたしのせいにされて、わたしは主人に殺されてしまいました。お金がなくなったため、家はほろびましたが、わたしのむねんははれません。どうか、このお金を使い果たしてください。お金が無くなれば、わたしは成仏できます」
   泣きながらうったえるゆうれいに、男は、
  「よしよし、このお金は、わしが、のこらずつかってやろう。だから、成仏せいよ」
  「ありがとう・・・」
   ゆうれいはそれ以来、あらわれなくなったということです。
おしまい