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2月26日の日本の昔話
  
  
  
  ひっぱりあいず
 むかしむかし、ある村に、せけんしらずのむこさんがいて、あるとき、お嫁(よめ)さんといっしょにお嫁さんの実家によばれました。
   実家では、ごちそうをつくってまっています。
   お嫁さんは、せけんしらずのむこさんが、ごちそうをたべるじゅんばんをまちがえて、親にわらわれないよう、むこさんの服に糸をつけて、
  「あたしがよこで、この糸をひっぱってあいずをします。ツンと、一回引っぱったら、おつゆを飲み、ツンツンと、二回引っぱったら、ごはんを食べ、ツンツンツンと、三回引っぱったら、おかずを食べるのですよ」
  「うん、わかった」
   お嫁さんの実家につくと、さっそく、ごちそうのはじまりです。
   むこさんは、あいずにしたがって、おつゆも、ごはんも、お料理も、じゅんじょよく、おちついてたべはじめました。
   お嫁さんの親たちは、それをみて、
  「せけんしらずどころか、たいしたもんじゃ」
  と、かんしんしました。
   そのうちに、お嫁さんは、トイレにいきたくなったので、
  「すこしのあいだくらい、だいじょうぶでしょ」
  と、糸のさきを、うしろのはしらにむすんで、そっとたちました。
   するとそこに、ネコがやってきて、糸にじゃれつき、ツンツン、ツン、ツンツンツンツンツンと、むちゃくちゃに、ひっぱりました。
  「これはたいへんだ! いそがしいぞ」
   むこさんは、ネコが引っぱるのに合わせながら、おつゆも、ごはんも、おかずも、むちゅうで口にほうりこみました。
   そのようすをみていたお嫁さんの親たちは、
  「やっぱり、そうとうな、せけんしらずじゃわい」
と、あきれはててしまいました。
おしまい