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6月5日の日本の昔話

きっちょむの天のぼり

きっちょむの天のぼり

 むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
 あるとき、きっちょむさんは村にきみょうな立て札を立てました。
《明日の正午、畑にて、きっちょむが天昇りをいたします》
 さあ、村中は大さわぎです。
 一体何が始まるのかと、その話でもちきりでした。
 そして、いよいよ次の日。
 きっちょむさんの畑に、村中の人が集まってきました。
と、そこヘやって来たきっちょむさん。
「みなさん、わたしもいよいよ今日、天に昇ることになりました。つきましてはお願いがござります。天へは、このはしごを伝わってのぼりますので、誰か下でおさえていて下さい。それから、わたしも最後はにぎやかにいきたいので、他の方々は下で踊(おど)りながら、『天のぼりは危ないぞ』と、言って下さい。それではみなさま、どうかおたっしゃで」
 こうしてきっちょむさんは、少しずつはしごをのぼっていきました。
 下では村の人が、天を見あげながら、
「天のぼりはあぶないぞ、天のぼりはあぶないぞ」
と、言いながら、そこら中を踊りまわります。
 きっちょむさんは、はしごのてっぺんから下の様子を見ていましたが、やがてどうしたわけか、スルスルと下りてきて、みんなに向かってこう言いました。
「せっかく決心してのぼりましたが、こうみんなに『あぶない、あぶない』と言われると、やっぱりおそろしゅうなりました。そんなに危ないなら、今回はやめにします」
「はあ? ・・・・・・」
 それを聞いた村の人は、しばらくあっけにとられていましたが、急にバカバカしくなって、ブツブツ言いながら家に帰っていきました。
 あとにひとり残ったきっちょむさんは、しめしめとばかり、十分にならされた畑をながめて、
「よし、これで今年は、畑をたがやさなくてもいいな」
と、ニッコリ笑いました。
 村の人たちに踊りをおどらせて、自分の畑をたがやしたのでした。

おしまい

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