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9月9日の日本の昔話
絵すがたよめさん
むかしむかし、働き者の若者がお嫁さんをもらいました。
とってもとっても、きれいなお嫁さんです。
若者はうれしくてうれしくて、毎日お嫁さんの顔をながめてばかりで、全然仕事をしません。
こまったお嫁さんは、自分の顔をかいた絵をわたして言いました。
「この絵を見ながら仕事をして下さい」
それからは、若者は田んぼのそばの木にその絵をはり付けて、毎日せっせと働きました。
ところがある日、ヒューと風が吹いてきて、大切なお嫁さんの絵が飛んでいってしまいました。
その絵はヒラヒラ飛んで、お城の殿さまの庭に落ちました。
その絵を見た殿さまはビックリ。
「・・・なんと、なんとうつくしい。この女の人をさがしてつれてこい」
まもなく、若者の家に殿さまの家来がやってきて、お嫁さんを無理矢理(むりやり)お城へ連れて行きました。
そのとき、お嫁さんは急いで若者に言いました。
「アメ屋になって、お城に来て下さい」
お城に行ってからのお嫁さんは、毎日泣いてばかりです。
殿さまは、こまってしまいました。
そこへ、若者がアメ屋になって歌を歌いながらやってきました。
♪トントコ、トントコ、アメ屋でござる。
これを聞いたお嫁さんは
「オホホホホホッ」
と、うれしそうに笑いました。
「そうか、アメ屋の歌が好きなのか、それならわしも歌ってやろう」
殿さまはアメ屋をそばに呼んで、着物を取り替えさせました。
アメ屋のかっこうをした殿さまは、身振り手振りで歌います。
♪トントコ、トントコ、アメ屋でござる。
その時、家来がやってきました。
「こら、アメ屋は城に入ってはいかん。でていけ!」
殿さまはお城の外に追い出されてしまい、二度と戻ってこられませんでした。
それから、殿さまになった若者とお嫁さんは、お城でしあわせにくらしました。
おしまい