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9月16日の日本の昔話
  
  
  
  海の水はなぜしょっぱい?
 むかしむかし、ある村に、びんぼうな男がいました。
   ある日のばん、その男のところへ、白いひげのおじいさんがやってきました。
  「道にまよったので、ひとばんとめてくだされ」
  「ああ、それはおこまりでしょう。いいですとも。さあどうぞ」
   男はしんせつにとめてやりました。
   次の日、おじいさんは男に、小さな石うすをくれました。
  「とめてもらったおれいじゃよ。右へ回せばほしいものが出て、左へ回せばとまるんじゃ。とめるまで出つづけるから、気をつけるんじゃぞ」
   おじいさんはそう言って、出て行きました。
   男はためしに、石うすを回してみました。
  「米出ろ、米出ろ」
   すると石うすから、まっ白い米がザクザクと出てきました。
   あわてて左へ回すと、米はピタリと止まります。
  「へー、こいつはすごいや!」
   男は米や魚をドンドン出して、まわりの家にも分けてあげました。
   男のとなりに、よくばりな兄さんがすんでいました。
   弟がきゅうにお金もちになったので、ふしぎにおもい、こっそりのぞきにきました。
  「なるほど、あの石うすのおかげだな。しめしめ」
   にいさんは夜になると、弟の家にしのびこんで、石うすをぬすみました。
   そして、ふねにのって海へにげました。
   いっしょうけんめいふねをこいだので、やがておなかがペコペコになりました。
   そこで、もってきたおにぎりを取り出して、
  「しおをつけてたべると、もっとうまいだろう。よーし、しおでろ、しおでろ」
   石うすを回すと、石うすからは、しおがザラザラとあふれ出し、たちまちふねいっぱいになりました。
  「わっ、わっ、もうとまれ! とまれ! とまってくれー!」
   よくばり兄さんは、石うすから物の出し方は見ていましたが、とめ方を見ていなかったのです。
   ついにふねは、しおのおもさにたえられなくなり、そのまま海にしずんでしまいました。
   あの石うすはいまでもグルグル回って、しおを出しています。
   海の水がしょっぱいのは、こういうわけなのです。
おしまい