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9月24日の日本の昔話
  
  
  
  ウリぬすびと
 むかしむかし、「かじゃどん」という、ウリづくりの名人がおりました。
   ことしもまた、たいへんよくできて、どれも大きく形もいいし、色つやも上じょうです。
   おまけに、そのおいしさときたら、ほっペたもおちそうなほどです。
  「いやあ、これはありがたい」
  と、大よろこびしていましたが、さあたいヘん。
   だれかが、まい夜まい夜、かじゃどんの畑にしのびこんで、だいじなウリをぬすんでいきます。
   それも、えらびにえらんで、よくうれた大きなやつばかりを。
  「さても、さても、にくいやつじゃ。せっかくのウリを、こうつぎつぎと、とられてはかなわん」
  と、見張り小屋をつくって見張っていましたが、あくる朝にしらベてみると、また、ぬすまれています。
   キツネやタヌキのしわざではありません。
  「これは、たしかに人の足あとじゃ。なんとか、ひとくふうせにゃならん。えーと、えーと」
   かじゃどんは、あれやこれやと考えたあげく、
  「おお、そうじゃ。あいてが人ならば、それがよかろう」
   ニコッと笑って、さっそく仕事にとりかかりました。
   まず、じぶんのせたけほどもある、大きなわら人形をこしらえて、それに服をきせ、あたまにかさをかぶせると、ウリ畑へかついでいって、たてました。
  「うん、これでよし。かかしどの、畑の番をたのみますぞ」
  と、かかしにたのんで、帰っていきました。
   これを見た村のしゅうは、
  「スズメやカラスじゃあるまいし。人間がぬすむというに、かかしに番をさせてなんになろう」
  「ウリぬすっとがやってきても、ポカンと見ておるのが、せきの山というもんじゃ」
  「かじゃどんは、ちえ者と思うたが、むだなことをするもんじゃ。あはは」
  「あはは」
  と、あっちでもこっちでも大わらい。
   ところが、かじゃどんのほうは、
  「ありがたや。村のしゅうがわろうてくれたおかげで、こんやはうまくいくぞ」
  と、ホクホク顔です。
   そうこうするうちに、夜になりました。
   夜もだんだんふけてきて、空には星ひとつありません。
   どろぼうには、もってこいの夜です。
   思ったとおり、夜中になると、黒いかげがあらわれました。
   ソロリ、ソロリと、四つんばいで、かじゃどんの畑の中にしのびこむと、
  「なるほど、これは村のしゅうのいうとおりじゃ。たしか、かかしのたっておるこのあたりが、とくベつウリがようなっておる。なんとも、よいにおいじゃ、うまいにおいじゃ。ウヒヒヒヒッ」
  と、手さぐりで一つとって味見していると、いきなり、せなかをポカリ!
  「なっ、なんじゃあ?」
   あたりをキョロキョロ見ていると、こんどはおしりをポカリ!
   たたかれた後ろを見てみると、なんとかかしが動いています。
   そして、そのかかしが、いきなりゲラゲラと笑い出しました。
  「お、お、おばけっ!」
   どろぼうは、あわてて逃げだしましたが、ウリにつまずいて、スッテンコロリン。
  「やい。おらが畑のウリぬすっとめ!」
   かかしは、あっというまにどろぼうをつかまえました。
   そしてかかしは大声で、
  「おーい、村のしゅう。つかまえたぞー!」
   わめきたてると、あっちからもこっちからも、村のしゅうが走ってきました。
  「おお、かじゃどん。ウリぬすっとをつかまえたか」
  「なあに、かかしどんがつかまえたのじゃ」
   いわれて、村のしゅうはビックリ。
  「なるほど、おまえは、かかしのかじゃどんじゃ」
  「そうじゃ、暗うなってからは、わしが、かかしになっておったのじゃ。アハハハハッ」
  「アハハハハッ」
   かじゃどんも村のしゅうも、大笑いしました。
おしまい