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9月28日の日本の昔話
  
  
  
  サル地蔵
 むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
  「おばあさん、弁当さ、つくっておくれ」
  と、おじいさんは、お弁当を持って山の畑へ出かけていきました。
   ここはだんだん畑で、よく、山ザルがきていたずらをするのです。
   おまけにその日は、お弁当のにおいがするので、さっそくサルたちがやってきました。
  「あれ、木の枝にごちそうがあるベ」
  と、みんなで、おじいさんのお弁当を食ベてしまいました。
   でも、おじいさんは知らん顔です。
   畑のまん中に、ジッとすわっていると、
  「あんれまあ、こんなとこに、おじぞうさまがいるベ」
  「こんなとこさ、置いてはもったいじぞう(→詳細)ないから、あっちの山のお堂さ、運んでいくべ」
   サルたちがよってたかって、おじいさんをかつぎあげると、
  ♪えっさらほいほい ぬらすなホイ。
  ♪サルのおへそが 流れても。
  ♪おじぞうさんを 流すな ホイ。
  と、歌を歌って川を渡りました。
  (クックククク。おかしいけれど、だまっていよう)
   おじいさんが、わらうのをガマンしていると、サルたちは山のお堂へおじいさんをかつぎこみ、
  「なんまいだぶ、おじぞうさん」
  と、たくさんのおさい銭をあげて、どこかへいってしまいました。
  「アハハ、これはゆかい」
  と、おじいさんは笑いながらお金を集めて、お堂を出ました。
  「そうだ、おばあさんに、なにか買うベ」
   おじいさんは町へ寄って、おばあさんの着物を買って帰りました。
  「おやまあ」
  と、おばあさんは大喜び。
   ところが、それを見たとなりのおばあさんがうらやましがって、
  「うちのおじいさんもいかせるべ」
  と、お弁当をつくりました。
   となりのおじいさんが、山のだんだん畑へいって、木の枝にお弁当をぶらさげておくと、
  「きょうも、ごちそうがあるベ」
   サルたちがやってきて、パクパクパク。
  「うん、うまくいったベ」
   となりのおじいさんは、大急ぎでおじぞうさまのまねをしました。
   すると、
  「おや、またおじぞうさまが、こんなとこにいるベ。もったいなや、もったいなや」
   サルたちが、おじいさんをかつぎあげて、
  ♪えっさらほいほい ぬらすなホイ。
  ♪サルのおへそが 流れても。
  ♪おじぞうさんを 流すな ホイ。
  と、歌って川を渡りはじめたのです。
   これを聞くと、となりのおじいさんは、ガマンできずに吹き出してしまいました。
   すると、サルたちがビックリ。
  「ウキキーッ、おじぞうさんのおばけだべ!」
   おじいさんを川の中へほうり出して、逃げ出しました。
  「たっ、助けてくれえ!」
   さて、そのころおばあさんは、
  「おじいさんが新しい着物さ買ってくるベ」
  と、いま着ているふるい着物をかまどで焼いてしまったのです。
   そこへ、やっと川からはいあがったおじいさんが、ずぶぬれになって帰ってきました。
  「ああ、ひどいめにあった。かわかすベ」
  と、着物をぬぐと、
  「新しい着物さ、どうした?」
と、おばあさんも裸なので、ビックリしたということです。
おしまい