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10月17日の日本の昔話
  
  
  
  鳥のみじいさん
 むかしむかし、やさしいお百姓(ひゃくしょう→詳細)のおじいさんがいました。
   おじいさんは、たいそうおもちが好きでしたから、毎日毎日おばあさんのつくってくれたおもちを持って、畑へ出かけていきました。
   きょうもお昼になったので、おじいさんは木の下にすわって、うれしそうにおもちの包みを開きました。
  「おいしそう。それでは、いただきますよ」
   おじいさんが、ちょうど半分ほど食ベたとき、チュンチュンチュンと、小さな鳥がおりてきて、
  ♪チチンピヨドリ あのもち食ベたや チチランポ。
  ♪ごしょのさかずき チチランポ。
  と、歌いだしました。
  「ほうほう、おまえは、おもちがほしいのか。さあさあ、お食ベ、お食ベ」
   おじいさんが、おもちを二つやると、鳥はペロリと食ベてから、
  ♪チチンピヨドリ も一つ食ベたや チチランポ。
  ♪ごしよのさかずき チチランポ。
  「よしよし、おなかがすいているのだね」
   食べても食ベてもほしがるので、おじいさんは大好きなおもちを、とうとう全部、鳥にやってしまいました。
   それでも鳥は、
  ♪チチンピヨドリ おもち食ベたや チチランポ。
  ♪ごしょのさかずき チチランポ。
  「おやおや、これは困った。もうないんだよ。でも、そんなにおもちが食べたけりゃ、わたしのおなかの中に入ってお食べ」
  「それじゃ、おじいさん、口をあけてくださいな」
  「よしよし、これでいいかな」
   おじいさんが口をあけると、鳥はチュンチュンチュンと、おなかの中に入っていきました。
   しばらくすると、おじいさんのおなかの中で、
  ♪チチンピヨドリ うまかった。
  ♪ごしょのさかずき チチランポ。
  と、鳥が歌いだしたのです。
  「おやおや、わたしのおなかの中で歌っておるわい。帰って、ばあさまにも聞かせてやろう」
   おじいさんが家に帰って、おばあさんに鳥の歌を聞かせると、おばあさんも大喜びです。
   そのうち、村の人がつぎからつぎヘと聞きにきて、おじいさんの家は大にぎわい。
   やがて、このことが殿さまの耳にも入りました。
   おじいさんはお城に呼ばれて、殿さまに鳥の歌を聞かせることになりました。
  「おなかの中で鳥が歌うとは、そのほうか」
  「はい、お殿さま」
  「これは珍しい。わしにも、ひとつ聞かせてくれ」
  「はい、かしこまりました」
   すると、おじいさんのおなかの中で、
  ♪チチンピヨドリ おいしいおもち。
  ♪ごしょのさかずき チチランポ。
   鳥が、かわいい声で歌い出しました。
   殿さまは大喜びです。
   おじいさんは、たくさんのほうびをもらいました。
おしまい